第50話 黒い靄


 瑠衣るいの話は、俺と瑠衣が出会う前の頃から始まった。


 昔のことすぎて、細かいところは覚えていないが、まだまくらさんに引き取られる前、瑠衣は身寄りのない子供の集められた施設で暮らしていたらしい。


 そんな時、同じ施設にいて仲良くなった友達――それが東雲しののめだった。


 そして、その中の何人かの子供たちは、おどうのような場所に通された。


 そこで見せられたのは、女の人が処刑される姿だ。


 女の人が首を前に突き出した形で拘束こうそくされ、斬首された。


 その首の断面から黒いもやのようなモノが生まれ、瑠衣はそれに飲み込まれた、らしい。


 今思えば、あれこそが鬼だったのだと、瑠衣は言う。


 そして、鬼を宿した瑠衣は、まくらさんに引き取られた。

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