第49話 女の子を一人で外にいさせるつもり!?2


「とりあえず家に入れて!」


「……それは家主やぬし台詞せりふだろ?」


「いいから入れてよ! 女の子を一人で外にいさせるつもり!?」


 逆切れの瑠衣るいに苦笑する。


 でも、その気持ちは痛いほど分かった。


「それもこっちの台詞だろ?」


「……」


 上目遣うわめづかいで睨んでくる瑠衣を見て、少しだけなごんだ。


「早く入れ」


「……お邪魔しますっ!」


 涙目のくせに元気よく家にあがる瑠衣に、リビングにいた母が気付いて目を丸くする。


「あらあら、瑠衣ちゃん久しぶりね?」


あきら君をお借りします!」


 母さんは瑠衣の言葉に対して考えているようだったけれど、


「少しだけよ?」


 そう口にしてテレビに向き直った。


 つまり、母さんは瑠衣のことを俺に任せてくれるらしかった。


 瑠衣を客間に通し、適当なグラスとペットボトルのオレンジジュースを持って戻る。


 客間に戻ると、瑠衣はまるで自分の部屋にでもいるかのように我が物顔だった。


 机に置いてあるティッシュで涙を拭き、鼻をかんでごみ箱へ捨てる。何度も捨てる。


「ほら」


 グラスにオレンジジュースを注いで渡すと、瑠衣は礼も言わず一口で飲み干した。


 困り顔の俺を、瑠衣は涙目のまま見つめてくる。


「……明は、シノちゃんのこと、どこまで知ってるの?」


 確かに、まずは情報をすり合わせるべきだろう。


 俺は東雲しののめや鬼について知っていることを洗いざらい話すことにした。


 それは、鬼が人間には手に負えない危険な存在であることや、それに対し霊媒師協会がとった方法や、瑠衣が鬼を宿した身寄りのない子供だったこと。そして、その宿命を東雲が肩代わりしたことについてだ。


 俺の話を真剣に聞いていた瑠衣は、東雲の名前が上がると改めて涙を浮かべた。


「全部、知ってるんだね?」


 そう言葉をらす瑠衣に、俺は逆に聞いてみる。


「瑠衣は、その……このことを、ずっと知ってたのか?」


 瑠衣はうなずき、


「私が最初にシノちゃんと会ったのは、小学生になる前だったの」

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