第48話 女の子を一人で外にいさせるつもり!?1


「ただい、ま」


 一軒家いっけんやである自宅の玄関を開けると、そこには母さんがいた。


 母さんはおたまを手に持ち、仁王立におうだちで俺を睨んでいる。


「帰ってこないと思ったら、そのまま連絡もなしに二泊とは良い度胸ね?」


「……その、悪かった」


 俺が素直に謝ると、母さんは困ったように眉を寄せた。


「細かいことは霊媒師れいばいし協会の人から聞いてる。瑠衣るいちゃんの関係で大変なのは私も知ってる。東雲しののめちゃんが身代わりになったって話も聞いた。それに、その全てをあきらに伝えていなかったのは、悪いと思ってる。でもね、明?」


「……」


 いつもと違って言い返すこともできない俺をみて、母さんはため息をついた。


 母さんだって、いつもなら馬鹿みたいに怒鳴ってくるくせに、今日は覇気はきがない。


「晩御飯食べて、お風呂入っちゃいなさい」


 母さんに言われたまま、俺は晩御飯を食べて風呂に入った。


 風呂の中でも考えてみたが進展はなかったし、大人の言うことを素直に聞いているだけの俺は、結局のところ子供でしかなかったんだと思う。ガキでしかない俺に何もできないのは当然で、それが、俺の無力さに拍車をかけている。


 やはり、俺には誰も助けられない。


 俺は、親父の様にはなれない。


 気落ちしながらパジャマに着替え、自分の部屋に行こうとしたところでチャイムが鳴った。


 こんな時間に珍しいなと思いながら、リビングから母さんの気配がしたので俺は口を開く。


「俺が出るよ」


 時計を見ていないから分からないが、今は夜の十時ぐらいだろうか?


 玄関に向かい、つっかけを履いて扉を開ける。


 顔を出した俺の前に、


「家出してきたっ!」


 制服姿で、涙目の瑠衣るいがいた。

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