第35話 ひと揉みの価値1
「勘違いしてほしくないんだけど、これは立派な
文句ねぇけど、すげぇ早口だな。
叫び終わった後、東雲はそそくさとベッドから飛び出し、制服を着ながら喋りたてた。
俺も東雲に
目覚める前の俺は思ったよりも危険な状態だったのかもしれない。
「ここは東雲の家なのか?」
「ええ、一人暮らしだから安心してもらって構わないわ」
ここはどうやら、東雲の借りているマンションの一室らしい。
高校生の一人暮らしって珍しいなと思いながら、助かったとも思う。
東雲の家族がいたとしたら、血まみれの俺を連れてくることもままならなかっただろうしな。
ちらりと掛け時計に目をやれば、すでに時刻は昼過ぎの三時を回っている。
大切な夏休みの二日間を、俺は睡眠だけで過ごしてしまった。
「とりあえず、東雲は俺を助けるために色々してくれたってことなんだろ? ありがとな」
俺の礼に、東雲はかぶりをふる。
「それは違うわ。そもそも鬼に襲われたのは私のせいで、獅子堂君を巻き込んでしまったのは私の落ち度。しかも、あの場に獅子堂君がいなかったら、私は死んでいたかもしれない。感謝してもしきれないのは私の方よ。……まさか寝こみを襲われるとは思わなかったけれどね」
東雲は胸を抱いている。
「……それはマジですまねぇ」
その事故については、平謝りすることしかできない。
俺は背後に半裸の女子高生がいると気づけるほど、人生経験が豊富じゃなかった。
「これは一つ貸しにしとくからさ? 何か頼みがあったら言ってくれよ」
俺の言葉に、東雲は
「ふふ。冗談よ。でも、とりあえずそういうことにしといてあげるわ」
頭が
「さて、これからどうしましょうかね」
深刻そうな東雲の表情を見て、色々と疑問が浮かぶ。
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