第二章 彼女の背負ったモノ

第34話 なんだ、この状況は?


 なんだか、右半身が汗をかくほど温かい。


 しかし、俺が目覚めた理由は、その熱のせいではなかった。


 何か硬いモノが、おでこに当たっているからだ。


 それがコツコツと俺のおでこに何度も当たっていて鬱陶うっとおしく、俺は目を開いた。


 最初に見えたのは、見覚えのない天井。


 その天井のより手前、俺の右側から黒い円錐状えんすいじょうのモノが伸びていて、俺の顔に当たっている。


 ……なんだ、この状況は?


 俺は見知らぬ部屋で、ベッドに寝ていたらしい。


 そのベッドは部屋の隅に置いてあるらしく、すぐそこにあるカーテンが外からの風で揺れていた。窓から日差しが漏れているから、朝か昼の様だ。


 良く寝た後みたいで、体調が良い気がする。


 目の前の黒い円錐状のモノに視線を向け、俺は固まった。


 それは俺と同じベッドの上の、掛け布団の中。




 俺の右隣で――下着姿の幼馴染、瑠衣るいが寝ていた。




 先ほどの黒い円錐状のモノは、そんな瑠衣の頭から生えていた。


 な、なんで、瑠衣に角が生えているんだ?


 ――って、そんなことよりも、なんで瑠衣は裸同然で俺と一緒に寝ているんだっ!?


 瞬間的にパニックへおちいりながらも、叫び声を上げなかったことは誉めて欲しい。


 視線を下げれば、何故か俺も瑠衣と同じように下着姿だった。


 俺は瑠衣を避けて後ろに手をついて起き上がろうとし、今度は左手側の異変に気付く。


 ベッドに手をついたハズの左手が、何かに触れていた。


 それは魅惑の柔らかさで、ちょうど手の平に収まるサイズ感の丸い物体。


 揉むことを前提に創り出されたんじゃないかと疑うレベルの神の産物。


 俺がゆっくりと振り返ると、俺の左手の先には――東雲しののめの胸があった。


 東雲も瑠衣と同じように下着姿で、俺に胸を揉まれながら目を覚ましたらしい。


 東雲はぱちくりと俺を見つめ、触られたままの胸に視線を向け、改めて俺に視線を戻す。


「い」


「い?」


 その眼にじわりと涙が浮かび、口がへの字に曲がった。


「いやぁあああああぁぁぁあぁあああああああっっっ!!」


 黄色い悲鳴と共に、頬を殴られる。


 平手ではなく、ぐーだった。


「いってぇええええええええええええええええっっっ!?」


 叫びたいのは、こっちも同じだった。

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