第17話 近所では胡散臭いと評判の親父


 俺の親父おやじ獅子堂ししどうまことは、俺が小学三年生の頃に死んだ。


 その死因について母さんは何も教えてくれなかったが、それは恐らく、俺を危険に巻き込みたくなかったからだと思う。なぜなら、俺の親父は普通の仕事をしていなかったからだ。そんな危険と隣り合わせの道から、母さんは俺を遠ざけたかったんだろう。


 俺の親父は、霊媒師れいばいしをしていた。


 普通なら胡散臭いと思える職業だったが、俺はそんな親父を尊敬していた。


 何故なら、俺にも小さい頃から幽霊が視えたからだ。


 東雲しののめに伝えたのは、そんな俺に親父が残してくれた大切な言葉だったりする。


 憑りつかれた俺を助けるために、親父が幽霊と戦う姿を一度だけ見たことがある。


 親父は日本刀で幽霊を斬った。


 消滅する幽霊を視るその顔が、とても悲しそうだったことを、今でもよく覚えている。


 その理由について聞いた俺に、親父はこう答えてくれた。


「視える人に、幽霊たちは助けを求めている。俺はアイツを、助けられなかった」


 俺はそれから、幽霊を必要以上に恐れなくなった。


 近所では胡散臭いと評判の親父だったが、俺はそんな親父を正しいと思っているし、そんな正しさを持つ馬鹿な親父は、どこかの誰かを助けるために死んだのだろうとも思っている。


 だから、そんな俺は幽霊を助けようとして、我流で活動を始めた。


 もしかしたら、俺の行為は危険なのかも知れない。


 でも、助けられる幽霊が一人でもいるなら、俺は手を貸してやりたいと思うのだった。

 

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