第13話 幽霊が視える、理由1


「――さて、冗談もこれぐらいにして、本題に移りましょうか」


「冗談だったのかよ?」


 しれっと宣言する東雲しののめに面食らう。


「でも、話を進めてくれて助かるぜ。実はこの後に用事をひかえてるから、手短に話したい」


 俺のその言葉に、何故なぜか東雲は目を丸くしていた。


「驚いたわ」


「……何に驚いたんだ?」


 俺の疑問に、東雲はこほんと咳払いをしてから答える。


「自慢じゃないんだけれど、私って告白されることが多いのよね」


 東雲は目を伏せて、申し訳なさそうに続ける。


「そして、今までに私の本性を知った人は、一人残らず告白を辞めて去っていったわ。それこそルイルイ以外に話し相手がいないぐらいだったし……私はそれなりに自分の特異性を知っているから、そこに不満はないんだけれど――でも、それで告白を断らずに済むのなら、それに越したことはないと思っていたの」


 その言葉を聞いて、俺はようやく納得した。


 東雲はその見た目から、多くの人を惹きつけてしまうのだろう。


 そして、告白を断るのだとすれば、それは悪気がなくても相手を傷つける結果になるに違いない。つまり、さっきの変人アピールはそのための会話だったのだ。東雲は直接的に断らず、相手が勝手に諦めてくれることを願った。


 やっぱり優しい奴なのかも知れない。


 ……変人には違いないけど。


「勘違いさせて悪いんだが、俺は東雲に告白する気はないぞ」


「あら、そうだったの?」


 東雲はまた驚いていたが、どこか安心したように息を吐いた。


「それなら猫かぶりモードで話せばよかったわね。まったく、私の学校生活は今日で最後なのに、私が変人であることがまたバレてしまったわ。……そう考えると、ルイルイに話したのは失敗だったのかもね。あの子ったら、本当にお人よしなんだから」


 ……少し、話が視えない。


 瑠衣るいがお人よしって、どういう意味だろうか?


「それで、獅子堂ししどう君の話って何?」


 東雲の言葉は理解できなかったが、向こうから切り出してくれたのはありがたい。


 俺はようやく、本題に入ることにした。


「その、さっきは冗談っぽく言ってたけどさ」


 ずっと気になっていたことを聞いてみる。




「東雲に幽霊が視えるのって、本当だろ?」


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