第11話 毒キノコ的な距離の置き方2


「私は幼い頃から、ずっと幽霊が視えたわ。でも、私はそれを変だとは思っていなかったの。だって、私にとって幽霊というのは、他の生きている人たちと同じように、普通にそこに視えていたから。幼げながらも他人には視えないモノが自分に視えている事実はショックだったけれど――それに気づいたところで、私の環境は変わらなかった」


「ちょっと待ってくれ!」


 俺の静止に、東雲しののめが口を閉じてくれた。


 しかし、その顔は〝今からが面白いところなのに〟と言いたげである。


 こいつ、話したかったのか?


「俺が瑠衣るいから聞いたのは、東雲が病気で学校を辞めるって話だ。東雲に幽霊が視えるかどうかなんてのは、その、初耳なんだが……」


 俺の言葉に、東雲は目を丸くして崩れ落ちた。


「な、なんてこと……」


 東雲はなわなわと震えながら俺を見上げている。


「そ、それで、私の本当の秘密を知って、どうするつもり?」


「どうって、別に何も――」


「みなまで言わなくても分かるわ。そのネタを使って〝バラされてくなかったら身体を差し出せ、ぐへへへへ〟っていうエロ同人みたいに私を脅す気なのね? そんな下卑げびた笑みで私を見つめないで。この変態!」


 東雲の胸を抱くような仕草は、余計にその大きな胸を強調させる。


「んなことするかっ!」


「な、なんですって!?」


 俺の否定に、東雲はあとずさる。


獅子堂ししどう君はもっと上級なプレイをご所望しょもうだとでも言うのっ!? 知らないかも知れないけれど、私はノーマルな女子で、正直に言って獅子堂君の特殊性癖には――」


「待て待て! そもそも俺は東雲を脅すために呼び出したわけじゃねぇし、何も要求してないだろ! それに俺は変態じゃねぇ! 仮に変態がいるのなら――そんな発想に至る東雲、お前こそが、真の変態だっ!」


 力いっぱい指さした俺の前で、


「獅子堂君、なかなかやるわね」


 東雲はなぜか不敵な笑みを浮かべた。


「私の話術についてこられたクラスメイトは、ルイルイに続いて二人目よ」


 なぜか偉そうな態度に腹が立つ。

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