第9話 期間限定大特価!3


「……いや、別にねぇけど?」


 東雲しののめと俺の繋がりと言えば、ただのクラスメイトに過ぎず、それ以上でもそれ以下でもない。


 しかし、そんな俺を見て、瑠衣るいは盛大にため息をついた。


あきらって、いつもシノちゃんのことを目で追ってるよね?」


 瑠衣の視線に目をそらす。


 ……マズい。


 確かに東雲のことが気になっていたけど、それは傍から見てもわかるレベルだったのか?


「ズバリ言うけど、明がシノちゃんを好きなのは知ってるからね」


 瑠衣にぐいっと顔を近づけられて、その迫力にあとずさる。


 しかし、待ってほしい。


 そもそも俺って、東雲のことが好きなんだろうか?


 正直に言うと、俺は人を好きになったことがないから、その発想に思い至らなかった。


 確かに気にはなっていたし、東雲は優しくてしっかり者で、俺の好みだと思う。


「女の子を待たせるのは良くないでしょ!」


 ……誰のせいだよ?


 そう口に出す前に、瑠衣が俺の背中を押す。


「うまくやるのよっ!」


「本気で言ってんのか?」


 笑顔でうなずく瑠衣に恐れおののく。


 俺って、もしかして――今から東雲に告白するのか?


 急な展開に、まるで頭が着いていかない。


「情報料と環境整備費で合わせて十万円だけど、今回は幼馴染の初回限定サービスで無料にしてあげる! あとは明の腕にかかってるからね!」


「……お、おう」


 告白――はしないにしても、東雲に話しておきたいことがあったのは事実だ。


 とりあえず、俺はこの短時間に十万円も得したらしい。


 幼馴染って、色々とすげぇや。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る