第4話 プロローグ4
鬼がここまで理性的に考える頭を持っているとは思わなかった。
鬼が近づいたことで、月明かりにその身体が透けて視える。
鬼の体内に、鬼の媒体となってしまった巫女服姿の女が視える。
苦悩を訴えるように顔を歪めているが、つまり彼女――
「お前の弱点を俺は知っている」
獅子堂は【鬼殺し】の切っ先を鬼に向ける。
「殺されたくなけりゃ、千を返せ」
その言葉に、鬼はさらに笑った。
「俺と千は一心同体。千はもう目覚めることはない」
「……やってみなけりゃ、わからねぇだろうが!」
獅子堂は地面を蹴り、鬼へと斬りかかる。
獅子堂の動きもまた、鬼と同様に化け物じみていた。
霊力を筋肉へ流し込むことで身体能力を上げる【
それは戦闘が主な霊媒師にとって初歩的な技術であったが、基礎動作を極めることが最も実力差を生むことを、獅子堂は経験上知っている。ただ走るだけであったとしても、他の霊媒師と獅子堂には明確な差が生まれるほどだった。
鬼の首を【鬼殺し】が捉えた
――かち合った刀から、悲鳴に似た甲高い音が響く。
白い刀身は、鬼の黒い爪によって中腹ほどで折られてしまった。
鬼が勝利を眼前に笑う。
「その
それでも、獅子堂は止まらなかった。
弾かれた衝撃を逆方向へ利用し反回転。
反対側から再度、鬼の首に狙いをつけた。
反応の遅れた鬼の首を、短くなった刀身で捉え――斬る。
しかし、
「硬いな」
獅子堂の全体重を乗せた渾身の一撃は、無防備な急所を狙ったにも関わらず、刃先が数センチめり込むに過ぎなかった。
全力でも、この有様か。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます