番外 千寿SIDE

 僕は双子として生まれ、僕だけが捨てられた。

 …捨てられたというのは語弊ごへいがあるかもしれない。里子に出されたのだ。

 だが、里子に出されようが、捨てられたにしろ、両親に『捨てられた』ことには変わりない。

 それでも、僕は捨てられたにしては裕福な家に拾われ、何不自由のない生活をしている。

 養父は、剣道の得意な僕を可愛がる。

 養母は、僕を流産した息子の生まれ変わりだと信じて溺愛している。

 おそらく、僕は捨て子の中でもとびきり幸福で、恵まれた子供のはずで、それに対してはひどく満足していた。

 だが、その一方で、双子の妹が僕のことを知らないことについては、常に大変な不満を持っていた。

 僕も頑是がんぜ無くおろかな子供ではない。僕を捨てた両親が、僕と一切連絡を取ろうとしない理由について、色々推察することも納得することもできる。

 だが、僕と同時に生まれた妹については別なのだ。

 僕は彼女を知っているのに、彼女は僕のことを知りもせず、ぬくぬくと本当の両親の元で育っているというのは、許せないことだった。


 だが、初めて僕宛に来た両親の手紙でそんな感情は吹き飛んだ。

 彼女は、僕の存在を知り、家族の反対を押し切って、『僕』を探しに来ることに決めたのだそうだ。

――僕は両親には捨てられたが、妹には捨てられていないらしい――

 これは、おそらく僕以外の人間には理解し得ない喜びであるだろう。

 手紙には、僕の養父母といらぬ波風を立てたくないため、妹を探さないように、見つけても素知らぬふりをするように、とあった。

 くだらない大人の都合だが、僕も僕なりに愛している養父母を心配させるようなことはしたくない。

 だが、折角『僕を探しに来る』という妹をみすみす手放すようなことはしたくない。


 では、どうすればいいか。

 どうすれば、兄と悟られないまま、彼女の傍にいることができるだろうか。





 そして、4月。

 僕は、妹に出会う。

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4月の兄妹 そらみや @soramiya

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