第2話 「俺」の気持ち
終わった。話には聞いていたが、そこそこ大変な仕事だった。短期間集中ではあるが、準備や後作業もかなりあり、負担であったのは間違いない。
このことは、彼女と疎遠になることを意味する。普段から事務的な用件でしか話しかけず、特段世間話に花を咲かせた記憶もなければ、俺にそんなスキルはない。
俺には見せない笑顔で同僚と話す姿、真剣に資料を見る姿、コーヒーを飲みながら物思いにふける姿・・・つい目で追ってしまう自分に気付くたび、自分を戒める。
女性と働くことが基本的に苦手で、且つ感情や直感に頼りがちな彼女と組むのは、たまに生産性を感じなかった。しかし、仕事に対する意識や、年下なりに頑張る姿、そして困り果てた際には頼ってくる姿を目の前にし、いつのまにか彼女が常に意識の傍らにいた。
彼女は俺の気持ちなんて知らない。ただ挨拶を交わすだけで十分かも知れない。いや、俺はそんな紳士な男じゃない。声を聞きたい、あの目を見たい、そして触れたい。
色が白くパーツはすっとしているが、あどけない表情、細く人形のような手足、嫌でも目に入る鎖骨、俺とはまるで正反対の彼女。あわよくば、あの手を捕まえ、抱きしめ、口を塞ぎ、自分のものにしたい。
こんな愚かしい気持ちは誰にも読ませられない。
今夜も1人彼女を思い、長い夜を過ごす。
解けた結び目 みなづきあまね @soranomame
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