第22話:スライムの反撃

「あら? もう終わったわよ? 保護者のお兄さん?」


「た、タクヤ、様ぁ……、ハァハァ」


「無事だったのか!? スライムって一体どういうことなんだ?」


「最近そこらじゅうでスライムを体内に寄生させる事件が多発してるのよ。狙われているのはマジックキャスターなどの魔法使い系のジョブの人が大半。それでギルド酒場に運ばれてくる人も多かったから、なんとか私でも対処できたわ、ふぅ」


「魔法使いが狙われてるってことは、魔力を欲してるってことなのか? 単純に考えて」


「それは、ギルド協会で調査中とのこですね? もしかしたらこれは誰かの意思を感じもしますけどね」


「ねぇ? さっきからききたかっただけどぉ、最近の受付嬢って医療魔法使えるのが常識なのぉ?」


「いいえ? ギルド酒場やギルドカフェなどの冒険者集会所には医療の専門知識を持った、プリーストが常駐しているところもあるけど、それは大手のところがほとんどです? た、たまたま私が魔法学校で医療専攻してるからどうにかなってるものを、みんな私に感謝しなさいってのよ」


「してるって、君まだ学生なのか?」


「ええ、そうです。受付嬢はアルバイトでやってるのです、見習いですけどね」


 集中モードから開放されて、元の敬語に戻ったアンジェリーナはため息を漏らしながらいうと、


「そうか……、ありがとな、俺、何もできてないけど」


 タクヤはお辞儀深々そう言うと、ぽんとアンジェリーナの頭に手を置く。


「べ、別にたまたまな人助けをしただけですから、感謝されるのなんか慣れっこです」


「そうか~、偉い偉い~、お兄さんがなでてしんぜよう」


「か、感謝されたいなんてそこまで別に思わないんですから~!」


タクヤは猫毛で毛ざわりの良いアンジェリーナの髪の毛をわざとらしくワシャワシャと撫で回す。


「あ、私も混ぜてぇー! ほれほれ~」


タクヤの撫で回しに便乗しフレデリカが背後からアンジェリナに飛びかかり、全身をくすぐり回す。




「きゃあ!? あーっ! もうっ! なんなのよぉ――! ああん! くすぐったいっ! この! チョックショオオオオオ――!」




「う、うるさいですぅ……」




 またたく間に状態が良くなったルゥルゥは周囲の騒がしさにツッコミを入れる。




 うじゅるるる




 彼らの背後からスライムのかけらが蠢いており、それが機を伺うと、アンジェリーナの方へ


「ピシャ――!」


「危ない!」


「きゃあ!?」


 スライムの欠片が飛び出してくるところをたまたま目撃したタクヤはアンジェリーナの背後の前に入り込み、


「うおおおお――!」




 スパン!




 手刀を組んだタクヤは居合抜きのようにスライムのコアごと両断した。




 壁には更にスライムの液体がへやじゅうにべっとりだ。




 両断されたスライムのコアから、バチバチと青白い放電現象のような光が漏れ出す。




 一方のタクヤの右手からは魔法陣を帯び、肘から先に半透明のブレードが展開されていた。




「あ、ありがとう……、ございます……」


「お役に立てて光栄です」




 タクヤはわざとらしく敬語で答えた。




「ったく、スライムはコア潰さんと死なないから、メンドーなんだよなぁ。や~れやれだぜ」


「無詠唱……!? こいつ何者……!?」


「心の声聞こえてっぞ? 受付嬢さん?」


「あっ、しまった! ついくせで!」


「いい勉強になったろ? スライムって雑魚かと思ったら結構厄介なんだぜ? でかいやつだとコアに攻撃届かんし、属性見誤ると魔法も通らん」


「わ、私の勉強不足でした、ごめんなさいっ」


「いいや、いんだよ? 勉強不足ってのは、別に君冒険者じゃあないし。そんなことより君みたいな小娘が俺をこいつ呼ばわりってのがなぁ、なっとらんなっ最近の若者は!」


 ビシッと軽くチョップをアンジェリーナに入れた。




 な、何なの、この男? と受付嬢の制服を着た少女は、一瞬眉をひそめる。




「ううっ、クソっ、職場では品行方正キャラ通してるのにぃ~。どうしてたまに素が出ちゃうんだろ、私?」


 カチューシャを付けた頭を抱えて項垂れるアンジェリーナはそういった。


「どうやら俺って攻撃魔法や回復魔法が全然だめでさ、ほらっ、こうやって結界貼るのは簡単なんだけどなぁ……」


 そうタクヤは言うと、無詠唱でマバリアを掌に展開した。




 人や動物、魔物など生命体には適正というものがあり、彼らが魔法を使用する際も例外ではない。




 タクヤの場合それが顕著な形で出てしまっているわけだ。




「だからさ、その結界魔法に関してはとことん極めようと必死こいたわけなのさ。才覚あるどこかのお嬢さんとは違ってだな!」


タクヤの表情はどこか怒りがこもっていた。


「えっ? 私? ふ、ふふん! いいでしょ~、やれるものなら白魔法やってみなさいよ~。小学生でも使えるのにね、このスカタンがっ!」


「んだとぉ? このアマぁ! お前も、やってみろよー! 無詠唱バリアをな!」


「そんなのできるわけ無いでしょっ!」


「てか、そのクソお生意気な態度! そんな腹黒な性格だから隠しきれないんだよっ。 かぁ~! よくギルド酒場の受付嬢になれたもんだな! けっ、けっ、けー!」


「なにを――!」


「あは、あははぁ……」


「助けてくださったのは大変ご感謝ですが、うるさいのですぅ……」




 タクヤとアンジェリーナは口喧嘩となり、ルゥルゥはうるさそうに耳をふさぐのだった。


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長らく更新が止まっていましたので、ここで終了とさせていただきます。

大変申し訳ございません。

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魔法学校卒冒険者の学び直し~ホワイト企業に就職したいけど魔法力が貧弱で無理ゲーなのでロリに魔法教えてもらってます~ 梅星さん太郎 @umetaros

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