第2話 反面教師~特異な生い立ちから学んだこと~
前回の告知通り今回は父親の不倫話になるが、暗くも重くもない内容なので軽い気持ちで読んで欲しい。
「反面教師」というのは、父親の不倫相手の事である。
だからと言って、これは私が子供の頃に経験した辛い過去ではない――。
父親の恋愛など、母を含め我が家では誰も興味がなかったのだ。
おかしな話だか、彼の不倫が私達の日常にすっかり溶け込んでいたのがその原因だと考えられる。
これから、そんな少女時代の私から見た「父親の不倫」を少し思い出してみようと思う。
私の父は恋愛に対して真面目な男だ。
なぜそう思うのか? 彼の恋愛事情は家族に「だだ漏れ」だったからである。
だだ漏れ例 その1
会えない時は、深夜に毎晩2時間以上の長電話。
しかも当時はケータイすらなかったので、家の電話で堂々とだ。
だだ漏れ例 その2
彼女と同棲を解消した時は、思い出の家財道具を家に持ち帰った。
お揃いで買ったであろうバスローブを着て、もう片方を母に渡したのは、もはや伝説だ。
だだ漏れ例 その3
さらに外国人と付き合っていた時は、異国文化を我が家に取り入れた。
急な食卓の変化に衝撃を受けたのを思い出す。
だだ漏れ例 その……キリないわっっ! ヤメだ、ヤメッ!
なにしろ相手女性の影響を受けやすく、本気になる度に母へ離婚を迫った事からも、その真剣な思いは私にまでよく伝わった。
一方、熱い父とは対照的に、離婚を突き付けられてもまったく動じない母と子。
そんな無関心家族にとって大きな問題は、父が何事にも「超短期集中型」タイプの人間だという事実だった。すぐに飽きてしまい、次へ行くのが彼の恋愛スタイルだ。
だもんで、これに騙された女性は非常に痛い目を見る。
当時中学生の私から見ても、彼女達は滑稽で哀れだった――。
ある日、我が家に不倫相手から手紙が届いた。
内容は勿論、恨みと怨念の固まりだ。父にフラれたらしい彼女の怒りは、私達にもしっかりロックオンされていた。
「家を燃やしてやりたい」と書かれた手紙を読んで発した母の一言を、私は今でも覚えている。
「甘い」
そう、手紙の彼女は父の本質を知らなかった。
不倫相手は1人とは限らない……彼は愛を1度に幾つも育める、器用な男なのだ。
すでに別の彼女と同棲を始めて浮かれる父に、手紙へ託した元カノの思い(恨み)は、届かずに終わった。
だからこそ、だからこそだっっ!
全てを把握していた母の一言は非常に冷静で、逆に怖かった。
当時の母は、父にどんな感情を抱いていたのだろう?
まだ好きだったのか?
それとも呆れていたのか?
複雑すぎる大人の感情まで、子供の私には読み取れなかった。
そして今になっても本人に聞けず、謎のままだ。
それから家を燃やされる事もなく、私は無事に大人になった。
少女時代、父の彼女達に教えられた「不倫の滑稽さ」を私は知っているので、これからの人生でも人の迷惑や自分の恥になる様な恋愛はしないと断言できる。
結局「不倫」なんて、子供(今は小学生でも知っている)を含めた周囲の人間から「恥ずかしい行為」としか思われない。
もしも陥りそうになったら、自分の恥をさらすリスクを念頭に置いてみると、冷静になれるのではないだろうか?
まあ、色んなもんが見えなくなった男女には「何を言っても無駄」とも思うが……。
少なくともエッセイを好む読者や作家は、普段から客観的に物事を捉えるタイプだと考えられるので、私が心配するまでもないだろう。
特異な生い立ち、それでもどうにか生きてみた! まきお @makikichan
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