眠れる美女に愛のキス

みなづきあまね

眠れる美女に愛のキス

俺の彼女は人一倍責任感が強い。完璧主義で、仕事もプライベートも自分なりのルールや到達度があるらしく、満足いかないと自分が許せない人だ。


そんなに感情の起伏は激しくないが、俺と一緒にいて、楽しければ笑う。それでいて、仕事モードの時には(直接仕事をしている姿を見たことはないけど、電話とかの様子では)、きりっとしているイメージ。


そんな彼女がボロボロに泣きながらやってきた。今日は俺の誕生日だったのに、仕事場でクレーム処理が重なり、仕事用の携帯電話にも絶えず連絡が入ってきた。


食事中も2回電話に出ていて、「ごめんね」と戻ってくるたびに、目が真っ赤になっていた。


今、俺の隣で寝息をたてて寝ている。今のところ悪夢にうなされてはいないようだけど、家ではしょっちゅう嫌な夢を見て、泣いたり叫んだりして起きるという。


明日も朝から電話が必ず来る、そう言って不安そうな顔をしたまま、俺の胸に顔をこすりつけながら寝た。普段はここまで弱音を吐かないから、さすがに驚いた。


黒い髪を撫でる。寝息は乱れない。彼女は何度も、「せっかくの日にごめん」と謝った。きっと今も内心俺に対する申し訳なさを抱えているに違いない。


しかし、正直誕生日なんてどうでもいい。一緒にいれることが幸せで、苦しんでいる彼女には悪いかもしれないが、こうやって自分を頼ってくれて、つかの間でも自分にしがみついて寝てくれる姿が見られることが幸せだ。


俺はそっと彼女の額に口づけた。こんなに君を愛しているだなんて、君はきっと知らないだろうな。

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