最終話

僕は信号を渡った。

振り返る事はできなかった。


やっと解放されたという安堵感からか、急に空腹だった事に気付く。


ボーイが紹介してくれた青森産の食材を使用した小さな居酒屋さん食事は

もちろんだが店主や地元の人達との交流も楽しみである。


まさに旅の醍醐味だ、「これだよ俺が求めていたものは!」

地元の食、人との交流、間違ってもあばとの夜の交流という選択肢はないのである。もちろんヤングなかわいい女の子との交流なら大歓迎である。


暫くボーイに言われた通りに歩くと古民家を改造したようなコジャレた建物に「録」と書いてある。


期待と共に、中へ入る。

あれ、なんか広い、、え、狭くて店主と地酒、、、交流、、は?

店を間違えてしまっただろうか?


店員「いらっしゃあせ~」


俺「あの、、一人なんですけど、、」


店員「こちらの席、どあぞぁ↑」


と、四人掛のテーブルに通された。


ボーイは確かに、チェーン店ではなく、店主が地場産食材を使って料理する美味しいお店と言っていた。。


メニューを開くと、確かに複数店舗が有ると書いている、、

謎は深まるばかりである。


とりあえずもう入ってしまったものはしょうがない、、

ビールと鉄板ステーキ、いもチーズ、馬刺を頼んだ。


話し相手もいない、隣の席は合コンの大学生、その隣は会話からして、イベントなどの舞台監督だろうか、俺のクリエイティブを理解できない○○は糞みたいな話でもりあがってる。


いいなぁ、楽しそうで、、

と、考えてる時にさっきのボーイが入ってきた。


ボーイ「すいません!もう注文しちゃいました?」

俺「もうしちゃいましたね、、」


ボーイ「まさか、おばさんついてくると思わなくて、これ以上ついてきたら店の場所ばれちゃうじゃないですか、なんでとっさに分かりやすいこの店を教えちゃって、、本当は違う店を紹介したかったんですよ。」


なんていいやつ何だろう。

ボーイの仕事は本来、店の前まで送った所で終わりである。

それをこんな面倒臭いことに巻き込まれた上に、誤りを正しにくるなんて、すごい根が良い奴だなと関心してしまった。


俺「いや、全然大丈夫ですよ、色々と本当にありがとう。」


ボーイ「いえ、また青森にきたら店を紹介しますんでまた来て下さいね!じゃ、すいませんけど店戻ります~」

と、ボーイは店を出ていった。


その後、料理が出てきて食べていると、後ろの席からボソボソと声が聞こえて来た、聞くつもりはないが聞こえてくる。


おじ「飛ぶのは進めれない」


おば「+%%4+)%&7」


ところどころしか聞こない。


おば「4#%#-[&##、死ぬしかない」


どうやら、自殺する相談におじが思いとどませる+楽な方法について話しているような感じだ。


飯が不味い、、今日ななんかついていない。

もう良い帰ろう、今日は移動とこの一件で大変疲れている、帰って寝よう。。


お会計の儀式を済ませて店を出た。


大きな道沿いにも関わらず人通りはない。


ホテルへ向かい歩き出した所で、なんとなく見覚えのある人影が目に入った。


俺「えっ?」


まさにデジャブー、青天の霹靂、ああ無常、おばが店の前に立っているではないか。。。


おば「探しちゃった、この道沿いの店って言ってたけど、どの店かわからなくて、、」


俺「、、、」


おば「あら、会社の人達は?」


俺「、、先に帰ってきました、明日早いので、、」


おば「これから、どうする?」


おばは、狩に興じている。すでに目は血走り尋常な様子に見えなくともない。

目の奥に大好物をロックオンしている。

瞬時に頭に浮かんだのは「殺られる」という言葉だった。


もはや狩などではない、狂気を感じていた。


おば「車、そこだからホテルまで送るわよ、乗っていきなさい」


乗るわけが無い、乗ったら最後、エキスを全て吸い取られるまで開放は

されないのは目に見えている。


おばも最終決戦に持ち込んできている。

今までは、「どうする?」「どうしたい。」などの主張に留まっていたところを、「いきなさい」とすでに命令になっているのだ。


もう、おばはもう正気じゃないのだ、狩でもない獣だ。


乗ったら最後、どこに連れて行かれるかわかったもんじゃない、もしくはおばのフィジカルが削られるまで強制ラブトークに付き合わされるのはごめんである。


もう優しさは捨てないといけない。心を鬼にして


俺「いや、ホテル近いですし明日も早いので歩いて帰ります、おばさんも気を付けて帰ってくださいね、おやすみなさい。」


と告げて、はや歩きでホテルへと戻った。


横になり、少し考えていた。

何が彼女をあそこまで突き動かしたのか、毎回いろんな人に声をかけてるのか、寂しさに寂しさを上乗せしてるだけなんじゃないだろうか?


居酒屋での自殺おばの話をふと思い出す。まさか死ぬつもりで最後に羽目を外すためだったんじゃないか?


今となってはおばが何者だったのかは謎であるが今日も青森の街角に立っているかもしれない。


「一緒にスナックに行ってもらえませんか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミッドナイト「おばさん」 横山ペロ @drivein

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ