第2話
さっそく、ハンターが現れる。その銃がうなる。一羽が負傷したようだ。
僕は言う、
「足手まといが…。気にせず前進するぞ、ナク、何時までも泣くな!」
「でもでも、私達の命ってそんなに軽いの。ツバサにとって?」
僕は平然と言い放つ、
「軽いさ」
オコルが言う、
「さっさと進んだ方が良さそうだな。それにしても、ワラウは何時もニコニコしてやがる」
そして、最初の犠牲者が出る。メロディと詩は、残りの九十九羽に受け継がれる。重い、頭が重い! 気にするな、ザコが死んだだけだ。ナクはまだ泣いている。それでも、空は澄んでいて気持ちがいい。記憶の片隅に、チームを想う心が残された。
僕達は、歌を届けに進む。また、一羽落とされる。ワラウが言う、
「泣くなナク。僕達が辿り着けば、みんなの笑顔が見られるさ。記憶を刻もう。犠牲になった鳥達の」
ワラウは笑っている。もう、十羽は落とされてしまったか。頭が重い。一羽一羽の記憶達が、残った者の脳のしわとなる。メロディと詩さえ受け継げればいいんだ。
そして、また一羽…。
「オレはもうダメだ。ナク、お前は継いでくれよ。記憶をオレだと思ってくれ」
ナクが叫ぶ、
「いやー!」
ワラウが言う、
「進もう。僕達の存在は記憶として残るから」
オコルが言う、
「笑っている。感情なんて本当は必要ないのかも知れないな」
オコルはそんなことは思っていないだろう。僕はエースだ。他のやつらとは違うんだ。僕は先頭を行く。
川の流れも美しい。木々達も静かに揺れている。歌の材料になっていく。託された歌を歌うんだ。ザコがいくら死んでも、僕さえ生きていれば伝わるんだ。
こちらに向かって弾が飛んでくる。やばい! しかし、僕をかばって一羽落ちていく。
僕は困惑する。景色とともに、脳に刻み込まれる。僕は言う、
「邪魔なんだよ」
ナクが抗議の口振りって言う、
「何、その言い方! ツバサを仲間が守ってくれたんだよ」
オコルが言う、
「いい加減にしろよ。仲間をこけにするのは」
ワラウが言う、
「行こう。仲間割れなどする暇があったら、翼を休ませろ」
ナクが言う、
「何故そんなに冷静なの、ワラウは…」
ナクが翼でワラウを殴ろうとする。オコルがそれを止める。もう、それ以上の言葉は要らないようだ。ぎくしゃくした関係のまま、僕達は進む。
大自然の中、僕達は何を思う。歌を歌っていた。数々のメロディが頭をよぎる。それに、能力のない僕でも、詩をつけていた。麻薬が生んだ自然破壊も歌として残しておきたい、と思った。
無事帰れるのなら、二人ともう一度話がしたいと思った。思い出達を歌にしてくれると思った。オコルもナクもワラウも、僕は気に食わない。仲間なんて、思っちゃいない。オコルなんか、僕に文句を言うばかりだ。ワラウも、笑ってりゃいいと思っているのか。ナクは、一羽が死ぬ度に羽を止める。迷惑なんだよ。本当は、僕も死んで欲しくなんかない。運命なんだよ。定めなんだよ。僕達が死にゆくのはな。
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