『夜道』
僕の名前はケント。
もう夜なんだけど、ちょっと散歩に出掛けたくなっちゃってさ。
楽な格好でいつもの夜道を歩くけど、ほとんど人とはすれ違わない。
夜も遅いし外灯も少なくて暗い道だから仕方ないね。
それに最近、通り魔が出現していて危険らしいから余計に人通りが減ったみたい。
それにその通り魔、なんか運動神経が良いみたいで。
あと、人を殺すことに長けてるんだってー。
だから女性とか子どもに限らず、大人の男も被害者に多いらしいよ。
確かこの前はガタイのいい男性が被害に遭っていたっけ。
本当、最近って物騒になったよね。
日々色んなところで殺人事件起こっているし、警察は一体何をやっているんだろうね?
これじゃあ安心して外も歩けないじゃないか。
まあ僕は歩いちゃうんだけど。
通り魔?そんなのちっとも怖くない。
だって僕、強いから。
もしも襲われそうになったら返り討ちにしてやるよ。
一発ぶち込んだらもう僕の勝ちさ。
実際、ついこの間も撃退したばかりだしね。
あっ、向こうから人が歩いてきた。
ああ、あのか弱そうな女の人が噂の通り魔なのか。
あんな細い腕でガタイのいい男性が殺されてしまったなんて、とても可哀想な話だ。
きっと、たかが女だって油断したんだろうな。
でも大丈夫、僕は決して油断しないよ。
僕は女性とすれ違ったタイミングで、彼女より早い動きで彼女の腹にナイフを突き刺した。
苦しそうに崩れ落ちる女性。
僕を殺せなくて残念だったね。
呼吸を荒くして、そんなに苦しいかい?
でもね、君が僕を殺そうとするからいけないんだよ。
僕はあくまでも正当防衛をしただけなんだから。
僕は何も悪くないよ。
何も悪くないんだ。
悪いはずがない。
絶対に僕は悪くないんだよ。
「なあ、聞いたか?最近噂の通り魔事件、昨日は若い女性が被害者だってさ〜」
「今朝ニュースで見たよ。まじで無差別すぎて怖いよな」
「それな。明日になったらお前が死んでたりして〜」
「ははは、やめろよ。縁起でもねぇな」
「冗談だよ。あ、でもごめん、多分お前の葬式は行けねー」
「あ?何でだよ?」
「用事入れる予定だから」
「いやそこは空けろよな?!」
『ワルイノハゼンブオマエタチダ』
狂気 海月ななり @kuragenonanari
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