僕の道

@otosiananokoi

第1話 夏が来た男

 この町にも夏が来た。特に今朝は暑かったので、帰りに普段は買わないスイカを買って帰ることにした。

 「それにしても、出会いってのは来ない人には来ないもんなんだな。」

 道路工事のバイトから帰る途中、そう独り言を言いながら、俺は歩いていた。

 俺の名前は 堺 元春。この前30を過ぎたフリーターだ。

 この年になってもマトモな職についてなく、その癖女癖は悪いもんだから。友達が少ない男だ。

 今日はバイト帰りに八百屋でスイカを買い。コンビニで酒とツマミを買って帰った。

 家に帰ると、さっそくスイカを切ってみる事にした。これが思ったより難しく。少々不格好なスイカになったソレを食べなながら、テレビから流れるしょうもないバラエティー番組を観た。 

 食べ終わったスイカの皮を片付けていると、めったに鳴らないスマホから音が鳴った。「誰からだ?」俺はスマホの画面を見つめる。親父からだ。俺は電話を取る。

 「もしもし。」と、久しぶりにきいた親父の声は前より老けていた。

 「なに?今片付けしてたんだけど」説教されると思ったので、声に少々苛立ちを交えながら答えた。

 「おっとすまなかったな。ちょっと急ぎの話があったもんでな。」

 急ぎの話?親戚の誰かが死んだのだろうか。俺は正直どうでも良かった。

 「実はな、先日飲み屋で知り合った人が娘さんをお前にくれてな。今娘さんがそっちに向かってるらしい。」

 「は?」 何言ってんだ?まるで意味がわからない。

 「嫁もらったんだから真面目に仕事しろよ。じゃあな。」 

 電話が切れた。

 親父のことだ、きっと何かの冗談だろう。俺は親父に苛立ちながら、酒を飲んだ。

 そのとき。インターホンが鳴った。

 俺は嫌な予感がした。

 

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