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「この住居もフリースクールもウィルソン社長が所有している。偽りだったとはいえアイビーとの婚約を解消したんだ。これ以上世話になるわけにはいかないよ。アリッサム、俺はフリースクールの講師を続けてわかったことが一つだけある。やはり教師は俺の天職だった。もう一度パブリックスクールの採用試験を受けてみるよ。採用される確率は低いけど頑張ってみる。無職では、アダムスミス公爵にご挨拶できないからね」
「お父様に挨拶……?」
「アダムスミス公爵夫妻にちゃんとご挨拶をして、俺達の交際を認めてもらう努力をする。俺はアリッサムのことが好きだよ。だからもう離れない」
「アスター、ありがとう。ボクも……アスターのことが好きだよ。これでもう思い残すことはない。やっと……卒業できる」
アリッサムは涙を零し、俺を見上げた。
頬に零れ落ちる涙を右手の指で拭う。
俺の指先で、アリッサムの涙がキラキラと光った。
――アリッサム……。
やっと本当の気持ちを伝えることができた。ありのままの気持ちを、アリッサムは受け止めてくれた。
アリッサムは背伸びをして、俺の唇を優しく塞いだ。重なった唇は冷たくて、微かに震えていた。
――狂おしいほどに、愛しい存在……。
あの時、俺がバレット王国に来なければ、アリッサムが交通事故に遭うことも、アイビーを苦しめることもなかったのに……。
俺はアリッサムの唇を優しく塞ぐ。
冷たい唇が微かに熱を帯び、アリッサムの体に温もりが戻る。
――逢えなかった時間を埋めるように……。
あの時、言えなかった想いを伝えたくて、俺は震える体をしっかりと両手で抱きしめ、「愛している」と、何度も呟いた。
アリッサムは天使のように微笑んだ。
その口元が微かに動いた。
声は聞こえなかったけど、口話は理解できた。
『あ い し て る ……』
アリッサムの体は眩い光に包まれ、キラキラと光を放ち、スーッと俺の目の前から消えてしまった。
それはまるで……。
流れ星のように……。
俺は何が起こったのか理解できず、アリッサムの名前を何度も呼びながら、その光に手を伸ばしたが、二度とアリッサムに触れることはできなかった。
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