107
「だからジンジャーに黙ってここに来たのか……?」
「そうだよ。それにアスターに見せたいものがあったから。本当は卒業式の日に見せたかったんだよ」
アリッサムはバッグから卒業証書を取り出し俺に渡した。
「わざわざ卒業証書を俺に見せるために、ここまで来たのか……」
「そうだよ。ボクはアスターの手からこれを受け取りたかったから。セントマリアンジェ校を辞めても、アスターはボクの担任なんだよ。アスターから卒業証書をもらわないと、ボクはアスターから卒業できないよ」
「アリッサム……。俺のことを今でも担任だと認めてくれるのか?」
「もちろん。ボクの担任はアスターだけだよ」
「……アリッサム」
「お願い。卒業証書を読み上げてよ」
「……わかった」
俺は卒業証書を受け取り、アスターの前で開く。
「『卒業証書。セントマリアンジェ校、履修学科、普通科。アリッサム・アダムスミス。右の者は本校において、頭書の過程を終了した事を証する』おめでとう。アリッサム」
俺は両手で卒業証書をアリッサムに差し出した。アリッサムはそれを両手で受け取った。
アリッサムの目に涙が溢れる。
それは……止まることなく、ぽろぽろと頬に零れ落ちた。
アリッサムが俺に抱き着いた。
ふわりとした感触に、微かな不安と違和感を抱いた。
「アスター……。ボクはバレット王国王立ローズ大学に合格したんだ。ローズ大学の寄宿舎に入るはずだった……」
「王立ローズ大学? スーザン大学じゃないのか? ジンジャーがよく許してくれたな」
「お兄様はボクを大人として認め、ボクの気持ちを尊重してくれたんだ。ボクはアスターの傍にずっといるつもりだった……」
「アリッサムがローズ大学の寄宿舎に入るなら、俺もこの街で新しい仕事もアパートも探さないといけないな」
「……新しい仕事? アスターフリースクールを辞めたの?」
俺はアリッサムの目を見つめ深く頷く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます