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「だからジンジャーに黙ってここに来たのか……?」


「そうだよ。それにアスターに見せたいものがあったから。本当は卒業式の日に見せたかったんだよ」


 アリッサムはバッグから卒業証書を取り出し俺に渡した。


「わざわざ卒業証書を俺に見せるために、ここまで来たのか……」


「そうだよ。ボクはアスターの手からこれを受け取りたかったから。セントマリアンジェ校を辞めても、アスターはボクの担任なんだよ。アスターから卒業証書をもらわないと、ボクはアスターから卒業できないよ」


「アリッサム……。俺のことを今でも担任だと認めてくれるのか?」


「もちろん。ボクの担任はアスターだけだよ」


「……アリッサム」


「お願い。卒業証書を読み上げてよ」


「……わかった」


 俺は卒業証書を受け取り、アスターの前で開く。


「『卒業証書。セントマリアンジェ校、履修学科、普通科。アリッサム・アダムスミス。右の者は本校において、頭書の過程を終了した事を証する』おめでとう。アリッサム」


 俺は両手で卒業証書をアリッサムに差し出した。アリッサムはそれを両手で受け取った。


 アリッサムの目に涙が溢れる。


 それは……止まることなく、ぽろぽろと頬に零れ落ちた。


 アリッサムが俺に抱き着いた。

 ふわりとした感触に、微かな不安と違和感を抱いた。


「アスター……。ボクはバレット王国王立ローズ大学に合格したんだ。ローズ大学の寄宿舎に入るはずだった……」


「王立ローズ大学? スーザン大学じゃないのか? ジンジャーがよく許してくれたな」


「お兄様はボクを大人として認め、ボクの気持ちを尊重してくれたんだ。ボクはアスターの傍にずっといるつもりだった……」


「アリッサムがローズ大学の寄宿舎に入るなら、俺もこの街で新しい仕事もアパートも探さないといけないな」


「……新しい仕事? アスターフリースクールを辞めたの?」


 俺はアリッサムの目を見つめ深く頷く。

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