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「アリッサム……」
「お兄様教えて……。ボク……会いたいんだ。アスターに逢いたい……」
「アリッサム。アスターはバレット王国で新しい生活を始めている。もう教師じゃない」
「わかってるよ。どんなに反対されても、ボクはバレット王国に行く。だから……お願い」
兄はため息を吐きながら、ボクの頭を撫でた。
「アリッサムはきっとそう言うと思っていたよ。やっぱり俺の妹だな。欲しいものは、誰に反対されても奪いに行く。たとえそれがこの国の国王陛下だとしても」
「国王陛下? お兄様……まさか、お兄様の恋人は王室の侍女ではなく国王陛下の第二夫人だったのか!?」
兄はボクの発言に目を見開き、ケラケラと声を上げて笑った。
「どうしてそんな発想になるんだ? 彼女は国王陛下の第二夫人なんかじゃない。彼女はこの国の王女だよ」
「えー!? 王女!? まさか、あの人がアイリス王女だというの? ボクはジョーダンのつもりで言ったのに、あ、あの人がアイリス王女!?」
「シーッ、アリッサム声が大きいよ。身分がバレないように、地味な装いでわざと変装していたんだ。アイリス王女は王位継承者だよ。まだ俺とのことは未発表なんだ。これは家族といえども極秘事項なんだからな」
「……わ、わ、わかってる。お兄様が……アイリス王女の恋人だなんて……」
兄はクスクス笑いながら、スーツのポケットからメモ用紙を取り出した。
「これがアスターの住所とアパートの電話番号、そしてこれがバレット王国行きの汽車の切符だ。これはお父様から預かってたアリッサム名義の預金通帳。資金はすでにバレット王国の銀行に送金してある。大学の学費や生活費に使うといい」
「お兄様……」
「どうだ? 俺を見直したか? さぁ、早く行け。汽車の時間に間に合わないぞ。車なら正門前に待たせている。一人で不安なら、コーネリアを連れて行け」
「お兄様ありがとう。でももう子供じゃないから、一人で大丈夫だよ。じゃあ、行ってくるね。お兄様、ボクはもうこの国には戻らない。アイリス王女とお幸せに……」
「わかってるよ。だから、片道切符しかないだろう。だが、挙式には参列しろよな」
ボクは笑顔で兄に手を振り、校舎の階段を駆け下りた。階段の下で、ジョーンズ君がボクを待っていた。
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