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「アリッサム、行くのか?」
「うん。ロータス、元気でね」
「バレット王国に行っても、アリッサムのことは忘れないよ」
「ロータス、ボクも忘れないよ。ボク達はずっと友達だから」
「うん。ずっと友達だ」
涙ぐんでいるジョーンズ君に手を振り、ボクは校庭を走り抜けた。
正門を出ても、ボクは迎えの車には乗らなかった。兄は賛成してくれたけど、母親代わりにボクを育ててくれたコーネリアには、猛反対されると思ったからだ。
「アリッサム様! アリッサム様! お待ち下さい! わたくしもバレット王国におとも致します。旅の準備はできておりますゆえ、車にお乗り下さい」
「コーネリア、ボクはもう子供じゃない。一人でバレット王国に行くから。コーネリアはお兄様のことを頼んだよ。王室付きの侍女にしてもらうといい。コーネリア愛してる。今までありがとう。元気でね」
「アリッサム様……!」
ボクは舞い上がっていたんだ。
セントマリアンジェ校を卒業した喜びと開放感から、周囲の景色が見えなくなっていた。
コーネリアに別れを告げ迎えの車の後ろを横ぎる。
気持ちはすでにアスターの元に行っていたため、反対車線を猛スピードで走っている車に気付けなかった……。
――キキィー……!
――ドンッ……!
車のブレーキ音が鼓膜を切り裂く。
体を打ちつける激しい痛みと衝撃。
ボクの体は宙を舞った。
青空と地面が反転した。
断末魔のようなコーネリアの叫び声……。
お兄様が……ボクの名前を叫んでいる。
周囲がスローモーションのように見えた。
まだ意識はハッキリしていた……。
走馬灯のように、アスターの笑顔が浮かんでは消えた。
――アスター……。
――アスター……。
次の瞬間、ボクは車道に激しく叩きつけられ、視界は……暗闇に閉ざされた。
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