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「……それ、本気で言ってるの?」
アダムスミス公爵邸の正門前に到着し、俺は別宅に向かう。
「待ってよ。本気でブラウン先生と交際するつもりなの!」
アリッサムが俺の腕を掴んだ。
「アリッサム、俺とブラウン先生はもう交際しているんだ。学校で公表してないけど、俺達は真剣なんだ。ジンジャーにも話してある。手を離しなさい」
アリッサムは愕然とし、掴んでいた手を離した。
「もう時間も遅い。こんな時間に一人で夜道を歩くのは危険だよ。早く帰りなさい」
「……アスターが戻らないから、話がしたくて待っていたのに」
「アリッサムともう話すことはない。今まで食事の世話をしてくれてありがとう。アリッサムに家事をさせてしまい、申し訳なかった。メイドも使用人も屋敷に戻ったらしいね。これからは受験勉強に集中して欲しい」
――アリッサム……。
これで……いいんだよ。
生徒に特別な感情を抱いた教師を軽蔑して憎め。
その方が……アリッサムを忘れることができる。
俺はそのまま別宅に向かい、玄関の鍵を開けた。アリッサムはまだ正門の前に立ち竦んでいる。
「アリッサム様! アリッサム様! まあ、こんな時間にどこにおでかけですか! ジンジャー様に知れたら大変ですよ。お屋敷にお戻り下さい!」
本宅からコーネリアが飛び出し、アリッサムに駆け寄る。アリッサムの肩を抱き、コーネリアは本宅に向かった。
俺は玄関のドアを閉め、唇を噛み締めた。
――アリッサム……。
俺のことは早く忘れろ。
――あと……四日で……
アリッサムとお別れなんだよ。
――アリッサム……。
本当は……今すぐお前を抱きしめたい。
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