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「ブラウン先生のことはとても尊敬しています。ただ……俺はバレット王国に住む親の元に戻るので、ブラウン先生と遠距離交際をする自信はありません。俺は……好きな人には傍にいて欲しいタイプだから」
「傍にですか……? 私、教師を辞めても構いません。迷惑でなければご実家に毎日電話します。毎週、バレット王国まで会いに行きます。それでも……私ではダメですか?」
ブラウン先生の予想外の返答に、俺は慌てている。
そんなつもりで言ったわけじゃない。
上手く断るための口実だったのに……。
「あ、いや、そんなつもりでは……。ブラウン先生ありがとうございます。やはり……それは難しいかと……」
ブラウン先生は「ふぅー……」と、息を吐き出し落胆した。
「わかりました。ジョンソン先生、好きな人がいらっしゃるのね。はっきり仰有ってくれれば、私も諦めがつくのに、女性を振るのは苦手ですか?」
「い、いえ……そんな人はいません」
咄嗟に、アリッサムの顔が浮かんだ。
俯いていた視線を上げた先に、外出先から戻るアリッサムがいた。
――アリッサム……。
「あら? アダムスミスさんだわ。アダムスミス公爵邸はもう少し先ですよね? 侍女もお付きの者もいないわね。こんな時間に一人で帰宅だなんて物騒ですね」
「そうですね……」
「生徒に二人きりのところを見られるなんて、噂にでもなったらジョンソン先生に申し訳ないわ。ジョンソン先生、今夜はこれで失礼します。もしも気が変わったら言って下さいね。私……いつまでも待ってますから」
「ブラウン先生、今夜は送って下さりありがとうございました。失礼します」
「では、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
俺は車の助手席から降り、アパートの前の歩道に立ち、車が見えなくなるまで見送る。
アダムスミス公爵邸に視線を向けると、外灯の下にアリッサムが立っていた。
視線が重なり、思わず目を逸らす。
アリッサムの横を通り過ぎると、アリッサムがトボトボと俺の後ろをついてきた。
長い沈黙が続く……。
その沈黙を先に破ったのは、アリッサムだった。
「アスター、ブラウン先生と付き合ってるの?」
突然の質問に戸惑いつつも、俺は咄嗟に嘘をついた。
「そうだよ。今まで黙っていたけど、ブラウン先生と交際してるんだ。ブラウン先生は大人だし俺もそろそろ結婚したいしな」
「結婚……!?」
「ブラウン先生と結婚を前提に交際してるんだ」
俺の言葉に、アリッサムは目を見開き呆然とした。
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