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ジョーンズはランチボックスの中のフライドチキンを一つ掴み豪快に齧り付いた。俺の好物を奪い取るなんて、図々しいにもほどがある。
「ジョーンズさん、何か話があるんだろう。進路のことか?」
ジョーンズは俺の話を無視して、モグモグと口を動かしフライドチキンの骨をゴミ箱に投げ入れた。
「何本食べても美味いフライドチキンだね。アリッサムのフライドチキンと同じ味がするよ。アリッサムは料理上手なんですね」
「そうなんだ……えっ?」
「ジョンソン先生はアリッサムのなに?」
「はっ? ジョーンズさん、アダムスミスさんは俺の生徒だよ。なに言ってるんだ?」
「同じランチボックスを持ってくるなんて、アダムスミス公爵家の別宅でアリッサムと同棲してるとか?」
「……ぶっ、ま、ま、まさか!?」
俺の顔はピクピクと引き攣っている。
「変なこと言うな。アダムスミスさんと俺がどうしてそうなるんだよ。俺はともかく、アダムスミスさんに失礼だよ。そんな根も葉もない噂を誰が広めてるんだ」
ジョーンズは俺を真っ直ぐ見据えた。
「俺だよ。見たんだ。アダムスミス公爵邸の庭で男装したアリッサムと、女装したジョンソン先生がイチャイチャしているとこ」
俺が女装……!?
み、見られたあ……!!
「ジョーンズ君、何か勘違いしてないか? 俺が女装するはずないだろう。アダムスミスさんはお兄さんと暮らしているんだ。お兄さんはアダムスミスさんと容姿が似ているらしい。男装したアダムスミスさんではなく、それはお兄さんと……お付きの侍女だよ」
「アリッサムのお兄さんは二人いないよ。車から降りた男性が本当のお兄さんだよね。それに俺は侍女だと一言も言ってないよ。確かアリッサムのお兄さんは恋人と暮らしているはず。それなのに侍女と芝生に寝転んで抱き合ったり木陰でキスするかな?」
ジョーンズはいつから見ていたんだよ。
まさか俺達のことをずっと見ていたのか。
「……ジョーンズ」
重苦しい沈黙が流れた後、ジョーンズが再び口を開いた。
「ジョンソン先生、俺は二人が別宅に入るところまでこの目で目撃したんだ。二人は同棲してるんだよね」
そこまで見られていたなら、もう言い訳が出来ない。
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