ロータスside
57
二年の時にアリッサムと同じクラスになって以降、俺はアリッサムに好意を抱いていた。
当時のアリッサムは男子の制服を身につけ、アダムスミス公爵家の令息であると認識していた。もちろん、クラスメイトの誰しもがそう信じて疑わなかった。
我が校は自由な校風で、性別による制服の指定はない。従って男子が女子の制服を着用したり、女子が男子の制服を着用することも珍しくはなかった。
自分でいうのもおかしいが、俺はアリッサムが男子でもその気持ちは変わらなかった。
三年になりクラス替えはあったが俺達はラッキーなことに同じクラスになった。ただその頃から、アリッサムの様子が少し変化した。
いきなり女子の制服を身につけ登校したんだ。当然、それには腰を抜かすくらい驚いた。
クラスメイトも騒然とし、みんな困惑していたが、アリッサムの女装姿があまりにもチャーミングで、美しい女装令息としてのイメージは定着した。
でも俺は……。
その姿を見てピンときたんだ。
アリッサムは自分のことを『ボク』と言っているが、女子に違いないと。
男児を重んじる家柄では、生まれたばかりの女児を
だが、アリッサムがどうして突然自分を曝け出したのか、その理由が知りたくなった。
俺達は友達以上恋人未満。
男女交際に厳しいセントマリアンジェ校だが、正式に婚約すれば話は別だ。
俺はアリッサムの気持ちを確かめるために、生徒主催のクリスマスのダンスパーティーの役員に立候補した。頻繁に行われる役員会で、もっとも距離を縮めることが出来ると思ったからだ。
それなのに、最近のアリッサムは冷たい。すぐにピンときたよ。アリッサムには好きな人がいると。
――あの日の放課後、俺は役員会が始まるまで教室で待っていた。
『アリッサム、話をそらさないで。俺はアリッサムのことが好きだよ。俺達はともに公爵家だ。お父様にアリッサムと正式に交際できるように頼んでみるよ。いいだろう』
俺はアリッサムに抱きついた。
『……うわ、ロータス。待ってよ。ボク達はさ、クラスメイトだよね。ボクはロータスに特別な感情なんて……。それにボクは男だ。男同士の交際をジョーンズ公爵が認めるはずはない』
『アリッサム。俺が知らないとでも思ったのか? 俺はずっとアリッサムだけを見てきた。クラスメイトはアリッサムのことを女装令息だと思い込んでいるが、俺はずっとわかってたよ。男装しているアリッサムも女装してるアリッサムも好きなんだよ』
『……ボ、ボクは』
『女の子のアリッサム、キスしていいよね?』
『……えっ?』
驚いているアリッサムに唇を重ねた。
俺の告白に、ノーと言う女子なんてきっといないだろう。
アリッサムの気持ちを繋ぎ止めるためにキスしたのに、アリッサムは俺を拒絶した。
これ以上の屈辱はない。
俺はアリッサムの秘密を知っているんだよ。
俺にこんな態度をとっていいと思っているのか。
心を深く傷付けられた俺は、役員会を欠席しそのまま下校した。アリッサムが女子だという証拠を掴むために。
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