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 ボクはみんなからそんな風に見られていたなんて。ジョーンズ君がボクと交際してると、吹聴するなんて信じられない。


「アリッサム、私達がロータスと交際しても恨まないでね」


 恨むわけないだろ。

 でも、ロータスが君達みたいな意地悪トリオに心を奪われるとは思わないけどね。


「ロータスはいい人だから、傷付けないで欲しい」


「やだ。ロータスのプライドを傷つけたのはアリッサムだよ。女装までしてロータスの気を引きたかったの?」


 ボクが気を引きたかったのは、アスターだけだ。


 でも、ジョーンズ君の気持ちに薄々気付いてたのに、気付かない振りをしていたのは、ボクなんだ。


 だから、ボクがジョーンズ君を傷付けたことにかわりはない。


「ごめん。もう委員会の始まる時間だから」


「逃げるの?」


「ボクは誰からも逃げないよ」


 ボクは椅子から立ち上がり教室を出る。女子にジョーンズ君とのことを誤解され、ジョーンズ君にキスまでされたボクは、明日からどう接したらいいんだよ。


 席が隣だから、無視することもできない。


 ◇


 生徒主催のクリスマスのダンスパーティー。

 役員会を終え、ボクは迎えの車に乗り込み別宅に戻る。


 時計に視線を落とすと、午後五時半を過ぎていた。


 今夜はローリア・トルネア伯爵家の晩餐会に招待されている。


 それまでにアスターの夕食を用意しないと。

 ボクは制服のままキッチンに立ち、冷蔵庫からチキンを取り出した。


 チキンに塩コショウをして、にんにく、バジル、ミックスハーブをすり込んで下準備をした。

 オーブンの天板に玉葱やセロリを並べチキンをのせ、ミニトマトやピーマンを並べ、ワインを少しかけバターやセロリの葉をのせ、200℃に予熱したオーブンに入れて焼く。

 焼き上がるまでに、フライパンでソースを作った。


 アスターはローストハーブチキンが大好物なんだ。まるでシェフになった気分だね。


 憂鬱な気分も、料理をしていると忘れられる。

 苦いキスも、美味しい料理で上書きされる。


 ――午後六時過ぎにアスターが帰宅した。


「今日は早いね。どうしたの?」


「アリッサムこそ、なにをしてるんだ。今夜はトルネア伯爵家の晩餐会だろう。もうすぐジンジャーが迎えにくるはずだ。早く着替えろ」


「わかってるよ。アスターの夕食を作ってるんだから」


「俺の? そんなことしなくていいよ。晩餐会に制服で行くわけにはいかないだろう。この屋敷にメイドはいないんだから。今日は女装するのか? ヘアメイク一人で大丈夫なのか? 俺が手伝ってやろうか?」


「ボクのことバカにしてるの? ショートヘアなんだから、何もしなくていい」


 同じキッチンに立つボク達。

 他人が見たら恋人同士に見えるかな。それとも、歳の離れた兄弟にしか見えないのかな。

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