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「そうだよ。ボク達はクラスメイト」


 ジョーンズ君の眉がピクリと上がる。


「ロータス……?」


「ごめん、アリッサム。俺、頭痛がするんだ。今日の役員会は一人で行ってくれる」


「えっ? 嘘? 帰るの?」


「今日だけだよ。次の役員会はちゃんと出るから。ごめんな」


 ジョーンズ君はボクから視線を逸らした。


 ジョーンズ君、怒ったのかな?


 ジョーンズ君が椅子から立ち上がったと同時に、教室のドアが開き数名の女子がドカドカと教室に入ってきた。合唱部に所属している女子だ。


「やだ。付き合ってるって噂は本当だったんだね。二人とも美男子だからお似合いね。でも、美男子同士で付き合うなんてもったいない。目の前には可愛い女子もいるんだけどな」


 無神経な女子の言葉に、ジョーンズ君は「くだらない」と言葉を吐き捨て教室を出た。


「ロータスどうしたの? まさかアリッサムに振られたの? ロータスもアリッサムもフリーになったら、私達にもチャンスがあるわね」


「チャンス? ボク達は付き合ってないし、変な勘違いしないで」


「嘘よ。キャサリンがロータスに告白したら、『俺はアリッサムと交際しているから』って断られたのよ」


 女子は顔を見合わせ「そうだよね」と頷いた。


「……嘘だろ」


 ボクは愕然とし、窓の外に視線を向ける。校庭で迎えの車に乗り込むジョーンズ君が見えた。


「クラスのほとんどの女子はロータス派とアリッサム派なんだよ。美男子カップルだから、みんな諦めていたのに。ロータスの心を弄ぶなんて、アリッサムのしてることが信じられない」


「……弄ぶなんて言い方はしないで」


「じゃあ、ロータスをからかったの? ロータスが美少女より美男子が好きなことがわかってるくせにからかったのね」


「だから、はじめから付き合ってないし、ボクはそもそも……」


 じゃないとは……今さら言えない。セントマリアンジェ校を卒業するまでは、男の振りを続けると両親やお兄様と約束したから。


「「サイテー!」」


 女子が一斉に叫んだ。


 そんな罵声を浴びせられたのは、入学以来初めてだった。


 女子が勝手に妄想を膨らませ、理想の美男子カップルとしてボク達を見ていたに過ぎないのに。


 女子って、どこまでも身勝手なんだから。もしもボクがだとカミングアウトしたところで、もっと嫉妬するに決まってる。

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