微熱 7
47
放課後、ボクは役員会が始まるまで教室で待っていた。
勿論、ボクの隣にはジョーンズ君が座っている。クラスメイトの殆どはもう帰宅しているため、教室にはボク達二人きりだった。
「なぁ、アリッサム」
「えっ? 何?」
「アリッサムはまだ婚約者はいないよね? もしかして好きな人がいるのか?」
「どうして……?」
「なんとなく、俺のことを避けてる気がしたから」
ジョーンズ君が真剣な眼差しをボクに向けた。
「そ、そんなことないよ」
「そうかな。ランチタイムとか、アリッサムに避けられてる気がしてさ」
「避けてないよ。ロータスはクラスメイトだし、同じ役員だし避けるわけないだろ」
「ただのクラスメイト……?」
「そうだよ。席も隣だし、ロータスはいつもボクに優しくしてくれるし、苦手な勉強も教えてくれるし助かってる」
ジョーンズ君が真剣な眼差しでボクを見つめた。
沈黙が流れ……。
気のせいかジョーンズ君との距離が少しずつ縮まっている気がした。
グッと近づいた顔。
危険を察知したボクは、わざとふざける。
「ロータスの鼻って高いよね。睫毛も意外と長いんだ」
「アリッサム、話をそらさないで。俺はアリッサムのことが好きだよ。俺達はともに公爵家だ。お父様にアリッサムと正式に交際できるように頼んでみるよ。いいだろう」
ジョーンズ君が突然ボクに抱きついた。
「……うわ、ロータス。待ってよ。ボク達はさ、クラスメイトだよね。ボクはロータスに特別な感情なんて……。それにボクは男だ。男同士の交際をジョーンズ公爵が認めるはずはない」
「アリッサム。俺が知らないとでも思ったのか? 俺はずっとアリッサムだけを見てきた。クラスメイトはアリッサムのことを女装令息だと思い込んでいるが、俺はずっとわかってたよ。男装しているアリッサムも女装してるアリッサムも好きなんだよ」
教師や生徒にも噓をつき続けているのに、ジョーンズ君には全部バレていた!?
「……ボ、ボクは」
「女の子のアリッサム、キスしていいよね?」
「……えっ?」
驚いているボクにジョーンズ君が唇を重ねた。アスターとは違う匂いが、ボクを包み込む。
人気者のジョーンズ君に告白され、ノーと言える女子なんてきっといないだろう。ジョーンズ君は公爵家の令息だし、美男子だから。
だけど、ボクはジョーンズ君にクラスメイト以上の感情はない。好きでもない人と、キスなんて舌を噛み切って死にたくなるくらい嫌だ。
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