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「アダムスミスさん。この問題はこの数式ではなく、この場合はXが……Yの………」
俺は慌ててテキストを開き、しきりにXとYを連呼する。
「ジョーンズさん、何か俺に用か?」
「ジョンソン先生、クリスマスのダンスパーティーの役員会って頻繁にあるんですか?」
「そうだな。これは生徒会主催のものだから。都合が悪いのか? それなら、誰かと代わってもらえばいい。先生が代わりを見つけてやるよ」
頼むから、誰かと代わってくれ。
その方が、俺の気も休まる。
「頻繁にあるんだ。よかった」
「は?」
よかった?
よかったって、なに?
ジョーンズはアリッサムの肩に手を回して、ギュッとからだを引き寄せた。
「アリッサムの放課後を、俺が独り占めできそうだ。一緒に下校できるね」
アリッサムの放課後を独り占め!?
一緒に下校!?
俺のアリッサムに、何で抱きついてんだよ。
「アダムスミスさんは迎えの車が来るだろう。ジョーンズさんも迎えの車が来る。一緒に下校はできないし、こら、二人とも離れなさい。他の先生に見られたら、厳重注意だよ」
「ジョンソン先生は意外と古臭いんですね。そんな校則はもう効力はありません。俺達はスペシャリスト(上級生)なんです。十八歳はもう大人なんだ。恋愛は自由意思ですよ」
「俺が古臭い!?」
「それに、理事長も校長も俺に指図はできない。何故なら、アダムスミス公爵家とジョーンズ公爵家がこの学校を創立したと言っても過言ではないからです」
「アダムスミス公爵家とジョーンズ公爵家が学校を創立……」
もしもジョーンズを怒らせたら、俺はクビか……。
「アリッサム、チャイムが鳴ったから教室に入ろう。俺、数学得意だから、教えてあげるよ」
なんなんだ。
その言い方。
俺では役不足とでもいいたいのか。
確かに、ジョーンズは成績優秀だ。
だからって、だからって……。
古臭くて上等だ。この学校の校則はそう簡単に変えられないんだからな。
ジョーンズはアリッサムの手を掴み、引っ張るようにアリッサムを教室に連れていく。
アリッサムは教室に入る直前振り返り、チラッと俺を見た。
困惑して俺に救いを求めたに違いないと一瞬思ったが、次の瞬間、アリッサムはニカッと笑った。
どういうつもりかしらないが、なんで笑ってるんだよ。
俺はアリッサムの担任なんだから、そんなことをしてもヤキモチなんて妬かないからな。
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