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鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、呆然と立ち尽くすアスター。その様子にボクは必死で笑いをこらえる。
そうこうしていると、隣のクラス担任のブラウン先生に声をかけられた。
「ジョンソン先生、アダムスミスさんがどうかしましたか?」
「……ブラウン先生、アダムスミスが女装を……」
「は? 何言ってるんですか? 確かにアダムスミスさんは平生は男子の制服を着用しています。でも高身長でショートヘアだからって、それは生徒に対する偏見ですよ。当校は性別に関係なく、制服は生徒が自由に選べるのです。女子が男子の制服を着用しても、男子が女子の制服を着用しても問題はありません」
「いや、そうではなく、す、すみません。初日に遅刻したので注意していただけです」
「アダムスミスさん、遅刻したの? 珍しいわね」
「兄が高熱を出して、看病していたら遅くなりました。すみませんでした」
ボクはブラウン先生に兄が高熱を出したと嘘をつき、ペコリと頭を下げる。
「そう。朝から大変だったわね。ジョンソン先生、アダムスミスさんは真面目な生徒です。お兄様と二人暮らしで家事は使用人に頼らず、アダムスミスさんがしているのよ。それにも拘わらず成績優秀で、昨年は生徒会長も務めたのよ。説教はこれくらいにしてあげては如何ですか? クラスの生徒も待っているでしょう」
「そうですよね。アダムスミスさん。もう教室に入りなさい」
「はい。ジョンソン先生すみませんでした」
ブラウン先生が隣の教室に入ったのを見届け、ボクはアスターにアカンベーと舌を出す。
アスターは一瞬ギョッとしたが、それでも状況が理解できず、狐につままれたような顔をしていた。
アスターはすぐに教室には入らず、兄に電話をしていたが通じず、腑に落ちない面持ちでボクを教室に入れた。
教壇に戻りクラス名簿を確認する。クラス名簿は男女混合でアルファベット順になっている。
「……自由な校風か。紛らわしい校風だよ」
アスターがボソッと呟いた。
以前アスターが勤めていた学校は男子校だったため、クラス名簿は全て男子の名前が記載されていた。
名前を見れば誰が女子で誰が男子かなんて、すぐにわかるはずなのに、相変わらず鈍感なんだから。
どちらにしろ、ボクの嘘はアスターには見破ることはできない。ずっと憧れていた女子の制服もやっと着ることができた。
ボクが男の娘だと勝手に勘違いしたアスターに、これで正々堂々と告白できる。
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