21

 不満が爆発しそうなボク。

 でも追い出されないために、グッと我慢した。


 客室で毛布にくるまりラジオを聴いていたボクは、不覚にもそのまま寝てしまった。


 ――深夜、目を覚ますと、ラジオと照明は消されていた。


 アスターが消してくれたんだって思ったら嬉しくて、アスターの寝顔をちょっと覗き見たくなった。


『寝室には一歩も入るな』と言われていたアスターの寝顔を、ちょっと見たら客室に戻るつもりだったんだよ。


 寝室に入るとベッドの中で、気持ちよさそうに眠っているアスター。


 ボクはアスターの隣にそっと潜り込み、その逞しい腕に頭を乗っけて腕枕してもらう。


 ふかふかのダブルベッド。

 アスターの体温であたたかくなったシーツ。狭い客室のシングルベッドより気持ちいい。


 スースー寝息をたてているアスターの耳元で、アスターにそっと話しかける。


 それなのにアスターは全く無反応。どんだけ爆睡してるの?


「アスター……アスター……。大事な話があるんだ。アスターはずっとお兄様に騙されていたんだよ。まあ、ボクの演技も子役レベルだったってことだけどね」


 アスターはスースーと寝息を立てている。


「アスター、ボク本当はね、男じゃないよ。男の娘でもないよ。両親やお兄様が周囲に男子だって言い続けたのには理由があるんだ。女子だと言ったら、お兄様の学友にボクを奪われると思ったみたい。バカみたいな理由だろ。おかげでボクは男装させられ、男みたいな口調になってしまったんだんだ」


 アスターが「うんうん」苦しそうにうなり声を上げている。


 怖い夢でも見たのかな?

 それとも金縛り?


「ボクはずっと本当のことを言いたかったのに、お兄様が許してくれなくて。アスター……ごめんなさい。ボクはずっとアスターのことが好きだったんだよ」


 ボクはアスターにそっと口づけて、そのまま眠った。


 ――翌朝、アスターより早く起きたボクはキッチンで朝食を作る。女子力を発揮して、ボクが女子だと気付かせるためだ。


 アスター、これがラストチャンスだからね。


 朝食の準備をほぼ整えアスターを起こしに行くと、アスターはまだ顔を歪めて魘されていた。


 よほど怖い夢を見ているようだ。


「アスター? アスター? 凄く魘されてるけど、大丈夫? 悪い夢でも見たの?」


「……うわあっ!? あ? ん?」


 目を見開き飛び起きたアスター。


 驚くのはこれからだ。

 今日学校で本当のボクを見たら、アスターはどんな顔をするのかな。


 でも、ボクはそれでも噓を吐き続けるけどね。

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