アリッサムside

 ボクは八年ぶりに、アスターと再会した。子供の頃、兄を交えて一緒によく遊んだ幼なじみだ。


 アスターはボクが初めて恋をした相手。

 ボクの初恋の人。


 八歳も年上の大人の男性。

 子供のボクは、大人のアスターに恋をした。


 アスターは高身長で美男子だ。凛とした瞳はあの頃とちっとも変わらない。


 ストレートの黒髪、傍に行くと爽やかな整髪料の香りが鼻を擽る。懐かしいアスターの匂い。


 兄が一人暮らしを始めて、アスターに会う機会も自然消滅したボクは、告白することもなく失恋した。


 昨夜、兄に『アスターに別宅を貸すことにした』と言われ、心臓が破裂しそうなくらい驚いた。


 あれから八年……。

 ボクはアスターの目にどう映るのだろう。


 ボクのことを大人として扱ってもらえるのかな?


 それよりも、ボクのことをちゃんと覚えていてくれるのかな?


 ボクはずっとドキドキしていたんだよ。

 アスターは教師になり、大人の男性としての輝きを増していた。


 アスターの男らしい笑顔に、ボクの鼓動は加速した。


 あの頃、アスターを見上げていたボク。

 今でも、アスターの身長には追いつけない。


 でもボクは、この八年間で身長が三十センチも伸び、今では百七十二センチになった。


 子供の頃に見上げていたアスターと、視線が近くなったことにドキドキが隠せない。


 アスターは気さくで明るくて、あの頃とちっとも変わらない。


 ボクが好きだった、アスターのままだった。


 引っ越しの荷ほどきに夢中になっていると、外はすっかり暗くなっていた。


 ボクの隣に座っているアスター。

 男なのに綺麗な横顔。ボクはその横顔に見とれる。


 ふと、アルバムに貼ってあった幼少期の写真を思い出した。赤ちゃんのボクに八歳のアスターがチューしている写真だ。


 ボクのファーストキスはアスターだった。両親でも兄でもなく、アスターだった。


 ファーストキスの感触なんて、記憶に残っていない。

 だから、ボクは確かめたかったんだ。


 アスターと交わしたファーストキスを……。

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