7
初めてグラマースクールの門をくぐった俺は、生徒達にからかわれ、何度も教壇で赤っ恥を掻いた。そこで俺は心身共に鍛えられたんだ。
アリッサムなんて、その時の生徒に比べると可愛いものだ。そう自分自身に言い聞かせるものの、落ち着くどころか益々テンパっている。
「……ていうか、アリッサム、もう食事を終えたなら帰っていいよ。今日はありがとう」
動揺している俺は、アリッサムから視線を逸らして食事を続けた。
「なーんだ。つまんない。今夜、ボクが腕枕してあげようと思ってたのに。昔、アスターがボクを抱き寄せて腕枕してくれたみたいに」
アリッサムが俺にウィンクした。俺は無言でアリッサムを睨む。その言い方、まるで俺が犯罪者みたいだろ。
「アスターそんな恐い顔しないで。美男子が台無しだよ。アスター、ディナーご馳走様でした。おやすみなさい」
アリッサムはナプキンで上品に口元を押さえ、椅子から立ち上がると同時に、俺の頬にチュッてキスをした。
「……っあ、お、おま、おま、お前……」
アリッサムを両手で押しのけると、目の前には澄んだ青い瞳。不覚にも俺の鼓動は大きく飛び跳ねた。
「アスター、何かわからないことがあったらいつでも電話で呼んで。ボクは本宅にいるからね」
アリッサムは無邪気な笑顔を俺に向けると、何事もなかったかのように、掌をヒラヒラさせて屋敷を出て行った。
さすが、ジンジャーの弟だよ。
ワンパク坊主だと思っていたが、いつの間にか色気付いている。
俺は、俺は、確かに赤ちゃんのアリッサムに何度もチューをした。それは兄が幼い弟にチューをしたり、頬擦りをしたり、ハグをしたりするのと同じ感情に過ぎない。
だが、アリッサムのアレは明らかに異なる。挨拶のスキンシップとは、明らかに違っていた。
あいつは十八歳なのに、禁断の愛に目覚めてしまったのか……!?
俺はブルブルと首を左右に振る。
いくら、アリッサムのファーストキスを奪ったとはいえ、少年のアリッサムに責任を取れないからだ。
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