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「うん、さっき聞いた」
「だから、俺達は教師と生徒になるんだよ」
「うんうん、わかってる。ていうか、この仔羊、柔らかくて美味しいよ。アスターも食べれば?」
アリッサムは仔羊のステーキに夢中で、俺の話なんか全然聞いていない。そんなに食いたいなら、俺のステーキも分けてやる。
「アリッサム、ちゃんと聞け」
冷静に話が出来なくなった二十六歳の俺。アリッサムに唇を奪われて、思考回路が完全にショートした。
「アスター、何を怒ってるの? 苛々してるね、欲求不満とか? わかった。恋人に振られたんだ。最近ご無沙汰なんだ」
「はぁー!?」
俺は思わず奇声を上げる。
自分のマヌケな声に、自分自身が一番驚いている。
「もう、二度と俺にキスをするな。いいな」
冷たく言い放ち、俺はパンをむんずと掴んで口に押し込んだ。
アリッサムは一瞬黙り込み口をモグモグ動かしながら、大きな瞳で俺を捕らえている。
「どうして怒ってるの? 幼なじみが数年振りに再会したんだよ。ふつう感極まってチューとかハグとかするよね?」
「お、俺は男だ!」
「アスター、落ち着いて。久々に再会したんだよ。ボクはアスターを見た瞬間、体に電流がビビビッて流れたんだ」
「は? 言ってる意味がわからない。感電したのか?」
「やだな、アスターにビビビッだよ。ボク達、運命の再会かも。ねぇ、アスター、ボクと付き合わない?」
俺は持っていたフォークをぽろんとテーブルの上に落とした。胃からコーンスープが逆流しそうだ。
「ボクのファーストキスはアスターなんだよ。アスターは子供のボクにチューしたよね? 赤ちゃんのボクにチューしてた証拠写真が残ってるんだから、言い逃れは出来ないよ」
「……はっ!? それは赤ちゃんの時の話だろ」
「ファーストキスはファーストキスだ。アスターは強引にボクのファーストを奪ったんだ。それ、犯罪だよね?」
アリッサムの発言に、俺の顔は火を吹いたように真っ赤だ。子供にからかわれて赤くなる俺、何やってんだか。
落ち着け、俺。
こんなこと、荒くれ者だらけのローズ校では日常茶飯事だったじゃないか。
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