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アリッサムがセントマリアンジェ校だったとは。
セントマリアンジェ校は上流階級の令息や令嬢が多く、学費も高額だ。さすが、アダムスミス公爵の令息だな。
「なんだ、ボクの学校の教師になるのか。嬉しいな、アスターに毎日学校で会えるんだね」
アリッサムは爽やかな微笑みを俺に降り注ぐ。キラキラした瞳が眩しくて、見つめているとクラクラしそうだ。
俺はどうかしているな。
アリッサムは男子なのに。
俺はノーマルだ。
恋の対象は女性であって、決して美少年じゃない。
ブルブルと顔を左右に振り、アリッサムが持ち上げることが出来なかった段ボール箱を両手で持ち上げる。
「うわっ、さすがアスターだね。ムキムキの魔神みたい」
「俺は魔神じゃないよ。こらっ、見てないで手伝え。何のために来てるんだよ」
「はいはい。ボクは昔からアスターの
「何を言ってるんだ、俺が下部だろ。それよりセントマリアンジェ校は寄宿制のはず。アリッサムも寄宿舎に入ってるのか?」
「父はセントマリアンジェの領主なんだ。ボクは寄宿舎には入っていない。寄宿舎でみんなと寝食をともにするなんて苦手だから。校長先生の許可を取り、特別に通学を認めてもらっている」
「そうか」
アダムスミス公爵家は学界、政界、経済界も牛耳るほどの権力者だ。ジンジャーも寄宿舎は好まず入らなかった。ていうか、ジンジャーの場合はあまりにも自由奔放過ぎて規則に馴染めず入れなかった。
アリッサムは荷物を運ぶ俺の後ろを、まるで仔犬みたいについて歩く。
アリッサムの幼少時代を思い出し、思わず頬が緩んだ。あの頃の俺は、小さなアリッサムが弟みたいに可愛くて仕方がなかった。
以前勤務していたローズ校は男子校で、全校生徒の半分以上が荒くれ者だったから、アリッサムみたいに育ちのいい美少年は見ているだけで目の保養になる。
引越しの片付けは日暮れまでかかり、アリッサムは俺の隣で楽しそうに荷解きを手伝った。俺達は懐かしい昔話に花を咲かせる。
そろそろ従順な仔犬に、ご褒美をやらないとな。
「アリッサム、今日は助かったよ。あとは一人でゆっくり片付けるから、今夜はもういいよ。駅前のレストランにディナーを頼んだから一緒に食べよう」
「アスター、礼なら違うものがいいな」
「違うもの? 小遣いなら俺の給金よりも多くもらってるだろう。ジンジャーみたいにたくさんはやれないが、お駄賃くらいならあげるよ」
財布を取るために立ち上がろうと身をかがめた時、ふわっと柔らかな感触が唇を掠めた。
一瞬の出来事に、俺は状況が理解出来ない。
ぷはっ……?
今のは……なになになに……!?
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