3
アリッサムに会ったのは八年振りだ。数年で子供って少年に成長するんだな。スレンダーでモデル体形。ワンパク坊主が美少年になった。
俺も違う意味で年齢を重ねたし、アリッサムの若さときらきらした瞳が眩しいくらいだ。
驚きを隠せない俺に、アリッサムはにっこり微笑んだ。
まじで、カワイイんだけど。
甘いスイーツよりも、とろけるように甘い笑顔。
以前勤務していた隣国のグラマースクールにも、こんな美少年はいなかった。
「あのさ、お兄様に引越しの手伝いをしろと言われて来たんだけど」
「引越しの手伝い? アリッサムが手伝ってくれるのか?」
ジンジャーのヤツ、自分が立ち合いたくないから弟をよこして誤魔化すとは。
ジンジャーの考えそうなことだな。
でも、まっいっか。
若い方が、俺達より力はある。
「ありがとう助かるよ。アリッサム、家に入れ。しかし、大きくなったな。俺には追いつかないけど、あんなにチビだったのに。今何歳になったんだ? もう百七十センチ超したのか?」
「十八歳になったんだ。百七十二センチだよ」
「そうか、もう立派な公爵家の令息だ」
俺は美少年を部屋に招き入れる。
「アリッサム、その箱こっちに持ってきて」
アリッサムが段ボールの箱に手をかけ、「よいしょ」と持ち上げようとするが、力仕事なんてしたことのない公爵家の令息は、すぐに挫折した。
「……ムリッ」
「は? アリッサム、お前男だろ。しっかり腰入れて持ち上げろよな」
俺はアリッサムの腰をバシッと叩き激を入れる。身長はあるが体格は細く痩せている。
アリッサムは再チャレンジするものの、即諦めた。公爵家の令息らしく、根性はない。
「やっぱムリッ、ボク、力仕事は苦手なんだ。アダムスミス家の使用人に手伝わせるよ」
可愛い顔をクシャッと歪め、アリッサムが俺に視線を向けた。どうやら美少年は肉体労働には不向きらしい。
「それは必要ない。自分のことは自分で出来るから使用人は不要だ」
「そう? 何でもしてくれるのに。ねぇアスター、この箱の中に何が入ってるの?」
「教科書や辞書だよ。俺は一応教師だからな」
「えっ? アスター、教師なんだ!」
「何を驚いてるんだ? ジンジャーから何も聞いてないのか?」
「お兄様は何も言わないからね」
「バレット王国のローズ校から転勤になったんだよ。祖国に戻るために採用試験を受けたんだ。新しい赴任先はセントマリアンジェ校だよ」
「セントマリアンジェ校? ボクの学校だね」
「アリッサムの? 嘘だろ?」
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