アリッサムに会ったのは八年振りだ。数年で子供って少年に成長するんだな。スレンダーでモデル体形。ワンパク坊主が美少年になった。


 俺も違う意味で年齢を重ねたし、アリッサムの若さときらきらした瞳が眩しいくらいだ。


 驚きを隠せない俺に、アリッサムはにっこり微笑んだ。


 まじで、カワイイんだけど。

 甘いスイーツよりも、とろけるように甘い笑顔。

 以前勤務していた隣国のグラマースクールにも、こんな美少年はいなかった。


「あのさ、お兄様に引越しの手伝いをしろと言われて来たんだけど」


「引越しの手伝い? アリッサムが手伝ってくれるのか?」


 ジンジャーのヤツ、自分が立ち合いたくないから弟をよこして誤魔化すとは。


 ジンジャーの考えそうなことだな。


 でも、まっいっか。

 若い方が、俺達より力はある。


「ありがとう助かるよ。アリッサム、家に入れ。しかし、大きくなったな。俺には追いつかないけど、あんなにチビだったのに。今何歳になったんだ? もう百七十センチ超したのか?」


「十八歳になったんだ。百七十二センチだよ」


「そうか、もう立派な公爵家の令息だ」


 俺は美少年を部屋に招き入れる。


「アリッサム、その箱こっちに持ってきて」


 アリッサムが段ボールの箱に手をかけ、「よいしょ」と持ち上げようとするが、力仕事なんてしたことのない公爵家の令息は、すぐに挫折した。


「……ムリッ」


「は? アリッサム、お前男だろ。しっかり腰入れて持ち上げろよな」


 俺はアリッサムの腰をバシッと叩き激を入れる。身長はあるが体格は細く痩せている。


 アリッサムは再チャレンジするものの、即諦めた。公爵家の令息らしく、根性はない。


「やっぱムリッ、ボク、力仕事は苦手なんだ。アダムスミス家の使用人に手伝わせるよ」


 可愛い顔をクシャッと歪め、アリッサムが俺に視線を向けた。どうやら美少年は肉体労働には不向きらしい。


「それは必要ない。自分のことは自分で出来るから使用人は不要だ」


「そう? 何でもしてくれるのに。ねぇアスター、この箱の中に何が入ってるの?」


「教科書や辞書だよ。俺は一応教師だからな」


「えっ? アスター、教師なんだ!」


「何を驚いてるんだ? ジンジャーから何も聞いてないのか?」


「お兄様は何も言わないからね」


「バレット王国のローズ校から転勤になったんだよ。祖国に戻るために採用試験を受けたんだ。新しい赴任先はセントマリアンジェ校だよ」


「セントマリアンジェ校? ボクの学校だね」


「アリッサムの? 嘘だろ?」

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