微熱 1
アスターside
2
――八月、親友のジンジャーから電話がかかってきた。
『アスター? お前、住まいを探してたよな? 両親が世界一周旅行に出立し、俺は暫く本宅に住むことになった。別宅に越して来ないか? その方が転勤先のパブリックスクールにも近いだろ?』
「アダムスミス公爵家の別宅なら赴任先のセントマリアンジェ校に近いし、公爵家の敷地内なら心強いよ。ありがとう」
『両親には俺が手紙を出しておくから、早めに越してこいよ』
「うん、そうするよ」
『引越しにも立ち会うからな。日時が決まったらまた連絡しろ』
「ありがとう。持つべきものは親友だな」
そう、俺達は幼なじみで親友。俺は平貴族だが、ジンジャーはセントマリアンジェの領主であるアダムスミス公爵の令息だ。ジンジャーは肉食系男子で、常に女性が途切れたことはない。
俺はアスター・ジョンソン。女性には縁がなく現在の職業は教師だ。
八月中旬、早速、アダムスミス公爵家の別宅に引っ越したが、気まぐれなジンジャーは引越し当日現れなかった。ジンジャーが口先だけの男だということはよくわかっていたが、あてにしていた俺は愕然とする。
引っ越しのトラックが引き上げた直後、玄関のチャイムが鳴った。
ジンジャーかな?
何だよ、来てくれたのか。
「ジンジャー! 遅いぞ……」
ドアを開けたら、そこにいたのは色白の美少年だった。金髪のショートヘア、二重の大きな目は青い瞳、人形みたいに長い睫毛。スッと通った鼻筋、ふっくらとした魅惑的な唇。
か、わ、い、い……。
俺は思わず美少年に見とれる。
別に俺は美少年が好きなわけじゃない。
あまりの可愛さに、つい目を奪われただけだ。
「あの? どなたですか? 君、お屋敷間違えてない? ここはアダムスミス公爵家の別宅だよ」
「うわっ、その声はアスターだよね。ボク、アリッサムだよ!」
「アリッサム? えっ……? あのアリッサム!?」
俺が知っているアリッサムは十歳までの悪ガキで、プレパラトリー・スクールに通っていた。
アリッサムがプレパラトリー・スクールを卒業する頃には、俺は隣国のカレッジに入学して引越した。と、ほぼ同時に、ジンジャーが本宅を出てこの別宅で一人暮らしを始め、それ以降アダムスミス公爵家の本宅に行くこともなくなり、アリッサムにも会っていない。
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