第2話夏休み初日

 太陽の日差しが肌に刺さり物理的痛みを感じている午前。今日は夏休み初日。

 歩いていると、運動部員達の声が聞こえてくる。その声がよりこの暑さを際立たせているように感じる。



そんな暑さの中歩いている私は自他ともに認めるごく普通の高校生だ。

植草高校1年C組、出席番号は14番で雑誌部所属。



雑誌部とはその名の通り雑誌をつくる部活だ。通称雑部。

なかなかフリーダムな部活で、部員はみんな暇人ばかりだ。部室でお菓子を食べながらダラダラしている事が多い。

気が向けば個人個人が自由に雑誌を発行しているので、特に雑部伝統の部誌のようなものはない。



さて、このように長々と雑誌部について説明したということは、文化部の私が夏休み初日に学校へ向かっている事と深く関係していると察して欲しい。



我が雑誌部は、基本的にノルマ等はない。

文化祭を除いて。

そう、文化祭だけは絶対にやらなければならない大仕事がある。

この仕事のおかげで廃部にならずに済んでいるのは周知の事実だ。よって避けることは不可能なのである。



そんな大仕事の大まかなな内容を説明したい。




その1、文化祭で行われるミスコン、ミスターコンの出場者を取材し、プロフィールや写真、コメントをまとめたパンフレットの制作。


その2、ミスコン、ミスターコンの優勝者の特集号の制作。





そして、パンフレットは夏休み中に制作していく。私はミスコンを担当しなければならないのだが、大いに面倒くさい。



しかも、もう1人いるミスコン担当の部員は同級生ではあるが、あまり関わりのない底抜けに明るい隣のクラスのスクールカースト上位者。世にいう陽キャという人種なのだ。


絶対に上手くやっていけない自信が過剰なほどにある。しかも男子。



ええ、何しろわたくし彼氏いない歴=年齢、且つ男女のいつメン、ナニソレオイシイノ?という思考のJKだ。そうJK。

そんな私が輝かしい青春を謳歌しているであろう陽キャと共同作業なんて勘弁してくれ。




「あ」



ん?後ろから声が聞こえ振り返る。そこには陽キャがいた。



「おはよう、笹島」


「えっ、ああ、おはよう」



慌てて挨拶をかえす。


彼は1年B組の苗崎なえざき悠緋ゆうひ

え?じゃあ笹島は誰かって?もちろん笹島は私だ。

笹島ささじまつたえ

それが私の名前だ。



苗崎悠緋が靴を脱ぎながら話し出した。



「今日めっちゃ暑くね? なんか今年1番の暑さらしいよ」



ニュースで言ってた。と、眩しい笑顔がこちらに向けられる。

確かに暑い。地球温暖化だ。髪の毛が顔に張り付き結んでこなかったことを後悔した。

あ、ちなみに私は今昇降口にいるんです。ダラダラと語り部をしているうちに実はもう校舎までたどり着いていたりするのです。



「あー、確かにめっちゃ暑いねー」



私は在り来りな言葉を口にし、曖昧に笑って靴を脱いだ。

上履きに履き替えた彼は、振り返りまた眩しい笑顔をこちらに向けた。



「本当にね!アイス食べたくなっちゃうね」



ま、眩しい。というか、食べたくなっちゃうねってなんだよ。男のくせに可愛いな。

やはり顔がいいと違うものだ。

私が言っても苦笑いされて終わりだぞ。

くそ。


とりあえずそれなーとか言ってみる。

ん?なんでこいつこっちみて動かないんだ?部室いけよ。

もしかして、私を待ってたりする?

いやマジか。


彼の行動の意図に気がついた私は急いで上履きに履き替えた。彼はそんな私をまたあの眩しい笑顔で見つめてくる。




「えっと、ごめん…その、部室…あの」



やばい。普段彼と話す事なんて無いから緊張するぞ。

私の見立てだと彼はコミュ力高めで、陽キャ以外とも仲良く話す比較的話しやすく合わせてくれるタイプな人のはずだ。何とかなる。

落ち着け私。


ひとまず発言をやめる。



「んふふ、じゃあ部室行こ」


あ、笑われた。ちょっと恥ずかしい。


「あ、うん」


とりあえず彼と並んで部室を目指した。





道中は彼が話すことに適当に相槌を打ちながら歩いた。






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