異能者

玲音は家に帰宅すると、直ぐに布団に体を沈める。


今日は休みだからいいものの、学校があるなら今日は行きたくもない気分だったからだ。


玲音は額に今までにない汗を浮かべながら冷静になろうと必死だった。


どうしてこうなったのか、自分に秘められたあの力はなんなのか、そして〈異能〉とは何なのか、謎が多かった。


玲音は枕を捨てると直ぐに洗面台へと向かう、自分を顔を写したあと、直ぐに顔を洗う。


頭から水をかぶり、荒い息とともに冷静になる。




(・・・なんなんだよ!なんだよ!俺はよ!)




長い髪が解かれ、髪の先から水玉が落ちていく。


後悔の表情が、玲音の顔に浮かんでくる。それと同時に、悪寒を感じていた。


あの男は「気にしなくてもいい」みたいな言い草だったが、実際はその程度で済まされるものでは無い。


街をあれだけボコボコに壊したのだ、いつ捕まってもおかしくはなかった。


玲音は髪を拭くと、下の階に降り、リビングでテレビをつける。


そこには昨日破壊された街の様子が映されていた。


家からそこまで遠くは無い距離だが、テレビでは「続く破壊」みたいな感じで報道されていた。




「・・・昨日の言葉、なんだったんだ」




昨日、1発した言葉は、ハッキリと記憶に残っていた。


女王の決議クィーンズ・ルール〉と言っていたが、それがもしかしてあの男の言う、〈異能〉なのだろうか。


あるいはただの勘違いなのかと思った時もあったが、その可能性だけはすぐに切り捨てた。そうであるなら、玲音は死んでいたし、そうでなくても襲ってくる理由がないからだ。


玲音は静かにテレビを消すと、ゆっくりと背中を椅子に預ける。


そして玲音は静かに目を閉じる。




そこに拡がったのは、たくさんの景色だった。


目の前には高級そうなベッドが、そして誰かが寝ているかのように布団は盛り上がっていた。


その隣には真っ白な純白のドレス、そして黄金の王冠があった。


布団で寝てる人物は玲音に気づいたのか、ゆっくりと体を起こし、玲音を見据える。


その瞳は綺麗で、まるで童話の世界に入ったかのように心を奪われそうになった。




「・・・久しぶりだな。我が分身よ」


「誰だよ・・・俺は、お前を知らないだろ。そしてお前も俺を知らない」


「そうだな・・・しかし、私はお前のことをわかってしまうからなぁ・・・」




そのは「くすっ」と笑い、布団でその微笑んでいるであろう顔を隠す。


その姿は妙に妖艶で、玲音は少し心を引かれた。


しかし、あくまでもこれはなのだ。その少女は存在しないのだ。




「存在しない・・・か。確かにそうじゃな。だが―」


「っ!?」




少女が横目でこちらをみたその瞬間。玲音の頬を少女の手が触れる。品定めするような撫で方。玲音は息を飲む。


気づけば少女は服を着ており、その服は玲音の部屋にあるものと同じだった。


少女はツカツカと玲音の周りを歩く。品定めするような瞳が玲音に突き刺さる。




「お前はなんなんだ。〈女王の決議クィーンズ・ルール〉ってやつと関係あるのか?」


「なければ貴様の前には姿を表さんよ。」


「・・・」




唖然となるしかなかった。


玲音の頭の中は再びいっぱいいっぱいになってしまう。パンクするぐらいの情報を整理しきれてないからでもある。


それ以前に今の反応で玲音が聞きたいことが全てすっ飛んでしまった。


正気を取り戻した玲音は、頭を犬のように横に振ると、真面目な顔で少女の腕を掴む。




「お願いだ。はぐらかずに教えてくれ・・・君は俺のなんなんだ」


「・・・妾は、貴様の・・・いや」







その言葉とともに俺の意識は晴れていった。











玲音が再び目を覚ますと、時間は昼をすぎていた。


机には書き置きと袋に包まれてる弁当が置いてあった。




『インスタントは身体に悪いからたまにはまともなの食べてよね!』




書き置きには、乱雑な字でそう書かれていた・・・


恐らくだが作り主は八葉、そしてこの乱雑な字は何か急ぎの用事でもあったのだろう。そんな感じを感じる。


俺は弁当を開け、割り箸を割って静かに食べる。




「・・・ちょっと苦いな」




その料理は玲音の目を覚ますにはちょうどよかった。


だが、玲音には気になることが残っていた。


まずは〈異能〉のこと、そしてあの少女のこと・・・そして・・・




「うるさいぞ。小童」




声がした。玲音より幼く、無邪気な声が・・・


そして玲音が声のするほうを見ると・・・そこには夢で見た少女が玲音の膝に座っていた・・・




「お久しぶりだな。

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クィーンズ・ルール 夜南 黒姫 @hsironeko

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