8月4日
僕らは、今日もあの浜辺で会った。
アヤの話を聞いた後、気づいたら僕はベッドの上だった。次会う約束はっしなかったけれど、会いに行くと決めていた。アヤもきっとそうすると信じていた。
アヤは、もう補聴器をつけてもほとんど聞こえない状態になっていた。アヤは、何も言わず僕の手を握り、近くの教会に案内してくれた。そこには、立派なグランドピアノがあった。アヤは、ジェスチャーで僕に目を閉じてと言った。
蝉の鳴き声、小鳥のさえずり、木々の風になびく音が、僕を包み込んだ。
ピアノの音が響いた。
あの時のピアノの音色を、僕は一生忘れないでしょう。それは、僕らのひと夏を語っているようでした。綵との思い出が、回顧されました。僕と綵の短すぎる夏。これほど誰かに夢中になったのは初めてでした。綵のピアノで、僕はいつの間にか眠りについていました。そこには、もう綵はいませんでした。限りなく現実に近い幻想のなかで、そうと知らないままに僕らはずっと過ごしていたのでしょうか。外に出ると、もう日は沈んでいました。ホタルが飛んでいました。無数のホタルが、闇の中を。光って消えるだけと知りながら、光るホタルは綺麗でした。上をみると、満天の星空が広がっていました。綵。君は今どこにいますか?どの星よりも綵は輝いていました。そんな綵と、あの星よりずっと近くで息をしていました。
今年も教会の周りには、ホタルが光っています。夏になれば、君に会える。そう思ってしまいます。
綵は、僕のなんともない日常に光をくれました。
僕を、光を教えてくれました。
本当にありがとう。
君より。
ひと夏の螢へ たなべゆいー! @2004_0215
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