8月2日
アヤは今日も髪の毛を下ろしていた。さすがに暑いだろう。今日は。いつもなら可愛いで済ませていたが、少し不安になった。今日は、あまり話さなかった。アヤは相変わらず綺麗で、僕の目は潤うばかりだが、アヤは元気がないように感じる。
風が吹いた。
アヤの髪が後ろに流れた。
綵の異変を確かなものとしたのは、8月2日。綵と出会って、あと2日で二週間でした。ホタルの成虫の寿命は約二週間だそうですね。綵とは何の関係もないだろうけど、何故か、あの日の別れた後に気づいたら調べていました。でも、もしあの日、綵が話してくれたことが本当なら、綵はまるでホタルのような人だと思います。
僕は驚いたのだろうか。避けていた事実を目の前にしたのだ。なんとなく気づいていた。彼女はピアノが本当に好きだった。僕も、一度でいいからアヤのピアノを生で聞きたい。アヤは音で夏を感じることはしなかった。変だと思った。口元を見ながら話すのも、僕の口の動きを見ていたんだろう。そういうことだったんだ。馬鹿野郎。自分。
ひとりで混乱している僕に、彼女はこんなことをいった。
「ねえ、人間には、光度があるって知ってる?よくさ、人間の寿命は心臓の心拍数と関係しているっていうじゃん。それみたいに、人間の光度にも限りがあるの。どのぐらいの光度を持つかは自分では決められない。でも、使い道は自分で選べるんだよ。そして、それは他の人のためにあるの。他の人を喜ばせたり、幸せな気持ちにさせることができる魅力。これが人間の光度。
私は、それをピアノにほとんど費やした。私のピアノで、喜んでくれる人がいて、本当に幸せだった。もともと持ってる光度、少ないんだ。わかってたはずなんだけど、君、私の事本気で見惚れてるし、なんだかほっとけなくって。君に出会えて嬉しかったんだ、ありがとう。初めて自分のために輝いたきがしたんだよ。」
目の前が滲んだ。口の中がしょっぱかった。海にいるから、砂でも目に入ったのかな。おかしい。涙が止まらないんだよ。僕は本当にアヤにたくさんの喜びをもらっていた。アヤは、僕のために光っていた。そう思うと切なさと、ありがとうで胸がいっぱいになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます