防具

それは『鎧』だった。


黒銀の光沢を放つ重々しい見た目に、兜から鎧靴にいたるまで、無駄のない作り。


ツヤツヤした見た目なのに、触るとザラザラと皮膚が削れる。


表面をよく見ると、まるで鮫肌のような、細かい鱗状になっていた。


どこか生き物を彷彿とさせる不思議な存在感があり、


人が着る物だというのに、今にも呼吸をして動き出しそうな、そんな生き物感が伝わってくる物だった。


「すごいだろ?モンスターの素材から作ったんだぞ?」

「金属じゃないのか?」


見るからに金属を加工して作った物だと思っていたが、そうではないらしい。


「金属なんてほとんど使ってないぞ?持ってみろ?」


親父はそう言って兜を外し、こちらへ渡してきた。


「………軽っ」


めちゃくちゃ軽かった。


金属ではこの軽さはできないと思う。


「これは父さんが使っていたものと同じものだ。巨大虫モンスターの素材を加工して作る。軽くて硬くて加工しやすい。細かい調整もすぐできるから初心者におすすめだ」


「そう……」


持ってみて分かった。


確かに、これは物凄く硬い。


仮にさっきの大剣で思いっきり殴っても傷一つつかないだろう。


「鱗のようなものが表面を覆っているだろ?これら一枚一枚が緩衝材の役割をしているんだ」


鱗のような模様が衝撃をうまく逃してダメージを減らしてくれるようだ。



「これを装備していれば、たとえ大型のモンスターに噛まれてもちょっとやそっとじゃ壊れない」


親父は全ての防具を外すと、頭から順番に僕に装備するように渡してきた。



実際に装備したことで改めて実感した。


この装備はただ軽いだけではないと。



確かに軽いし、見た目に反して遥かに動きやすい。

毎日着ていた制服より動きやすいと感じる。


「気が付いたか?」


僕が何かを感じたのをわかっていたのだろう、親父は、何かを察したようにそれに対する答えを教えてくれた。



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