武器

「………これは」


長年謎だった、開かずの間から姿を現したのは、身の丈2メートルはある大剣だった。


「バスタードという、大剣だな」


親父は自慢げに腕を組んで頷く。



「持ってみるか?」


「いいのか?」


「飾りじゃないんだからもちろんだ」


そう言って親父はバスタードのグリップを握り、片手で軽々持ち上げると僕に渡してきた。


(見た目ほど重くないのか……?)


見た目本物の金属の塊にしか見えないが、あまりに軽々しく片手で持って振り回す親父の姿を見ていると、ものすごくチャチな代物に見えてきた


一瞬ビビッたが、でかいだけのただの飾りか、

刃もどうせステンレスとかなんかだったりするのだろう。


そう思って受け取った。



が、



……………そんなことはなかった。



ズシャン‼︎



油断していたのも有るが、あまりの重さに耐えきれず、大剣の刃が地面についてしまった。



「………え?」


思わず間の抜けた声が出てしまった。


すぐに力を入れ直して刃がついたのはほんのわずかなのに、刃の半分が床に突き刺さっていた。


まるで豆腐に包丁を突き立てたみたいな感覚だった。


「おいおい、まだローンだって残ってるんだぞ?家を壊さないでくれ?」


そう言って笑う親父の顔は、今まで見たどの顔より明るかった。



じゃあこんな場所で渡さないでくれといいたいが、そんな余裕はない。


「……重い、無理」


両手でなんとか持ち上げ、刃を床から抜くと、今度は刃のやり場が無く、だからといって持ち上げ続けるにはあまりにデカくて重い。


早くどこかに置いてこの状態から解放されたい思いでいっぱいだ。


「ハハハ‼︎構えを知らないか、それはさぞ重いだろう」



構え……?


「そんなんいいから、早くどこかに置かせてくれ‼︎」


構えなんていきなり言われてできるものでもないし、教えてもらったこともないので知りもしない。


「よしよし、ここへ戻すんだ」


親父は、再びクローゼットを開いて元の場所へ戻すように言ってくる。


「うん……」


「ハハハ‼︎なんだその歩き方は?」


じゃあ手伝えよと思いながら、二歩三歩歩いてなんとかクローゼットへ到着。バスタードを戻し、一息つく。


「信じたか?」

「信じた」


間違いない、本物の大剣だった。


「このバスタードは、我が家系に代々伝わる狩猟武器だ」


自慢げに胸を張ってドヤ顔する親父のはしゃぎよう……


「これでずっと昔から父さん達は世に蔓延るモンスターと戦ってきたんだぞ?」


「ずっと?」


「そうだ。世界にはずっと昔から人智を超えた存在、モンスターがいた。それらは、放っておいても大したことないものもいるが、放っておけば世界の均衡を破壊しかねないものもいる。だから父さん達は悪いことをしたやつ、するやつらと戦って世界の均衡を保ってきた」


思い出話をするかのように語る親父。


「だが数年前、正体不明の力が世界を包み、均衡を壊した」


「それで世界中がモンスターだらけになった?」

「そうだ、それは世界の半分の生物だといわれている。そして近年、父さんの父さん、おじいちゃんだな、が、ある情報を掴んだ」

「それは?」

「おまえの通う学校に原因があると言うことだ。おじいちゃんはそれを調べに行って……」


帰って来なかった。



「父さんもすぐに行きたかったが、親父……おじいちゃんの言いつけでな、お前を一人前にするという、だからお前が独り立ちできる年頃、15歳になるのを待って、お前に全てを託すことにした」


親父は一通り語ると、僕に外へ出るように促す。


外にはもう何年も誰も立ち入っていないガレージがある。


僕もその存在は知っていたが、埃っぽいことと、ずっと危ないから近づくなと言われ続けて結局今日まで立ち入ることはなかった。


だが今思うとたしかに、あの大剣レベルのものが眠っているとしたら危ないし子供が勝手に入るのはよろしくないだろう。


そして今日、一人前の男として認められたことでそんな場所への立ち入りを許されたのだ。


そう思うと少し嬉しかった。

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