第19話:パラシニウム誕生よ!
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「ええ、そう言う事でして…はい、はい、申し訳ありません」
黒電話の受話器を左手に持ち頭を下げながら会話をするファヌエルはパラシエルから購入した例の四角い箱と呼んでいた正式名称は
今は漸く繋がったタクトの前世の世界の担当天使に電話にて謝罪していた所である。
「後日パラシエルの方を其方に向かわせますので…ええ、はい………失礼しました」
カチャンと小さな音を立てて受話器を本体に収めると、次にやる事リストと書かれたメモ紙に目を通す。
「イロウエルさんには取り敢えず事情を説明できたから…」
メモに書かれていたイロウエル事情説明と書かれた欄に線を引いていると、真っ暗な部屋の一部がぐにゃりと歪んだ。
その部分を開いてやればこの前やってきた顔が飛び出て来る。
両手には棒状の包みを持ち、背中にもまた大きな包みを背負っていた。
「
ゆっくりと入ってきたパラシエルは両手に持っていた棒状の包みをテーブルの上に置くと、懐に手を伸ばし葉書程度の大きさの封書を取り出す。
「世界災害許可証もちゃんと貰って来たよぉ~………本当、今回こそ死ぬかと思ったぁ」
ファヌエルはイスに座りぐったりとテーブルに突っ伏すパラシエルの手の先にある封書を拾うと、中身を確認し再び封をする。
封書を
紅茶の香りに誘われてか飛び起きるのだが、何処に置いてあるのか判っているかの如く紅茶の水面は波紋一つ波立つ事は無かった。
「世界災害許可証はちゃんと預かりました、お疲れ様です」
労う言葉に微笑で返事をすると紅茶を一口。
この味が忘れられないのなどと言いながら背中に背負っていた包みをテーブルに立てかける。
丁度一区切りついた所だったファヌエルも一緒に紅茶を楽しむと、先ほどからテーブルに鎮座する包みについての話が始まる。
「えとね?これは武器なんだけど、まだ武器じゃないんだよね」
パラシエルが包みを広げると、中には球状に纏まった液体としか言いようのない物が現れる。
液体金属とでも言おうか、色と言い形状と言い水銀の様なソレは球状に集められテーブルの上に鎮座する。
「これ私が作った新種の素材を液状化させた物なんだけど、ヒヒイロカネとオリハルコンとアダマンタイトを合成した合金にミスリルを追加して、更に合金化させたら何と言うかほらあれがこうなって
熱弁するパラシエルの言葉の半分も判っていないファヌエルであるが、うんうん頷くとパラシエルは次々に話しをしてしまう。
「最初は七色に光っててすっごい自己主張激しかったんだけど、それじゃ使いにくいから原子配列変換で一から組み直したら何と吃驚凄い事になったのよ。もうね、これは物凄い事だってなって
大げさに両手を大きく広げて興奮気味に語るパラシエルと、それを聞いて良く判らず取り敢えず相槌を打ち続けるファヌエルと言う違うタイプと言える二人であるが、これでも無二の親友である。
「じゃあ、何が凄いか語っちゃおうじゃないか。これに手を突っ込んで”武器が欲しい”って願えば、勝手にその人に一番ぴったりな武器に大変身します。いやー凄いね、武器以外には何度やっても変化しなかったけど。それでもさ、もうね、名前つけちゃう位素晴らしいの。よっ!!パラシニウム誕生よ!」
興奮収まらないと遂にイスの上に立ち上がり球体化した液化金属に名前を付け称えるように両手を出しだすとバランスを崩してイスから落ちそうになる。
慌てて座り直すパラシエルが称えたソレを眺めていると、仕上げをしようよと提案してきた。
「つまり、これをそのままタクトさんに渡してしまうって訳です?」
金属の成り立ちから使い方まであまり理解していないファヌエルであるが、取り敢えずタクトが手を突っ込んだら武器が完成すると言う辺りは理解したのだろう。
それを聞いたパラシエルも仕上げは本人の手でやって貰えば大丈夫と伝える。
「じゃあ早速送りますね。座標は………ああ、居ましたね」
タクトにくっついている
「えっと、この辺りですね。投げちゃって下さい」
ミニエルの位置らしき場所に繋がっているのだろう、虚空に開けた次元の穴が揺らめくように広がるとパラシエルは例の
「じゃあ帰るね、次もまた完成したら持ってくるから」
言うや否や途轍もない速さで駆け抜けてしまうパラシエルの速さに負けじと次元に穴をあけて玄関口を作ると、そこを颯爽と抜けて帰って行った。
「さて、パラシエルも行った事だし、続きをしないと…あら?」
玄関口を閉じながらイスをきちんと並べようとしたファヌエルは、イスを引く際にふと足をぶつけてしまいとある物体がそのまま虚空に投げ出されてしまった。
その物体はゆらゆらと揺らめいたかと思えば、そのまま世界へと落下してしまったではないか。
「………私も
取り敢えず、まずは出来る事として先ほど帰ってしまった無二の親友に連絡を入れる事にした。
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