第14話:でも最終目標は魔王城ですからね?
((そろそろいい加減に冒険しませんか?))
数か月程図書館に籠り続け勇者と呼ぶより本の虫と呼ぶのが正しいのではないかと疑問が湧いて来るようになった頃、図書館に入り浸るのに飽きたミニエルが
エリナも表情には出さずとも連日の図書館と宿の往復には飽きているらしく、変化を求めているのは確かであった。
「一般常識については問題ないかと」
口数の少ないエリナが周りを見渡し、人の気配がないのを確認すると簡潔にそう告げて、ミニエルも誰も居ない事を確認した後ともあり声を上げてそうだそうだと囃し立てる。
前世で言うスマホのチャットアプリみたいな感じだなとタクトは認識している。
それをミニエルに伝えるとありがたみが薄れますよなどと言われてしまったが、この解釈で強ち間違えていないのであえて否定まではしなかった。
「いやぁもうちょっと訓練必要じゃないかな?」
困ったと言うか名残惜しそうな顔をするタクトを見て二人は駄々を捏ねる子供にしか見えないとの感想を抱く。
前世の事を知らないエリナからしたら年相応の反応とも取れるこの行動に不審な点を見いだせないが、ミニエルからしたら歳の割に我儘を言う姿を見て少し呆れているようだ。
「もう、そんな事言って。
城を出てからも毎日確りと訓練を続けたタクトは安定して五十倍程の力を使いこなす事が出来るようなった。
それも意識を切り替える事により出力の調整も出来たりと、魔法に熟練したと言っても過言ではない程のレベルで魔法をコントロールできるようになっている。
「そろそろ実戦経験も必要では?」
訓練では組み手を行う事もあったが、出力五十倍のタクトであっても何の魔法も使っていないエリナに対し未だ一勝も出来ていない。
無論接近戦闘の訓練である以上、攻撃魔法を禁止して行ってはいるがそれでも運動能力の差が歴然としている相手にタクトは一度も触れられない状態である。
圧倒的な実力差によって毎回床に転がっては悔しがるタクトの姿があるばかりだ。
「いや、でもエリナに手も足も出ないし…」
言っていてやや情けなくなったのか声が小さくなるが、エリナは当然ですとハッキリと答える。
エリナからしたら身のこなしや視線の位置やフェイントの有用性などで、どれだけ強化したとしても経験として負ける事は無いと言う。
まず一撃でも攻撃を当てたければ相手の動きをよく見て経験を積む事ですと何度も教えられている。
「んーどうするかなぁ…確かにたまには外の空気も吸うべきかも知れないけど…」
今だ悩むタクトの前にひらひらと飛んでいくと、王都周辺の地図を広げたミニエルがここに行きましょうと提案する。
「十一番
その位置を確認したエリナが
その分質のいい晶石も手に入るので、金銭面でも稼げるとして王都からも
資源が手に入る場所と言う事からも国の管理とされていて誰でも入れる訳ではなく、冒険者として国に申請を行う必要がある。
タクトも
今までずっと図書館に居た訳だが、タクトは
これが無ければ冒険者登録を行い、F級から徐々に等級を上げて行き国から認められなければならない所であった。
なお等級はF級からS級までの6段階あり、一番下がF級で一番上はS級。
S級は名誉職と呼ばれ、偉大な功績を残した者が手にするのであるが、現状A級が実力的トップとなっているのが現状である。
話題に上がった十一番ダンジョンの等級はD級であり、初心者お断り程度の難易度はあるようだ。
メイドである筈のエリナも冒険者登録してあり等級はA級である。
危険管理として等級と同じランクの
但し実力が伴っていなければ待っているのは死である事は言わなくても判る事だろう。
「そう言えば
物語特有の魔王と言う響き故か、特別な感じの名前に引かれてかさり気なく聞いてみるタクトにエリナは無理ですと静かに答える。
「でも最終目標は
ジッとしている事に飽きたのか、二人の周りをふらふらと飛び回りながら将来的には行くと宣言する。
ミニエルによるとこの世界を救うには
世界を救うと言う事に今一反応が鈍い二人ではあるが、取り敢えず地盤を固めましょうとの声に賛同する。
「何れは攻略する事を期待されるでしょうが、今は目の前の一歩です」
エリナが諭すようにそう言うと納得したかのように見えたタクトではあるが、でもでもだってと図書館に入り浸ろうとするのは相変わらず。
結局は駄々っ子を外に出すのに苦労するのであった。
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