第4話:ミニエルとでもふぁーちゃんとでも呼んでください
これまでの記憶を全て思い出したタクトはファヌエルそっくりな小さな少女にひとしきり詰め寄った後、息を整える様に深呼吸を数度繰り返した。
詰め寄っている最中も三十六年間過ごしてきた大人としての記憶とこれまで育ってきた五年間の記憶の咀嚼が上手く噛み合わず、俺はあんなに可愛くないんだ等とブツブツ呟いたりしている姿はとても痛々しいものでもあった。
一段落付いたとばかりに少女は額に流れる冷たい汗を拭うような仕草をすると、ここから先の話の前に今置かれている状況を整理しましょうね?と遅すぎる前置きを述べ、語りだす。
「幼児退行については申し訳ありません、これしかもう手段が無かったと思ってください。
そう言われると強く出れないのか、タクトはちょっとばつの悪そうな顔を見せる。
「安心して良いんですよ、五歳児の身体でもちゃんと力を発揮すれば正しく人類最強と誇れるだけの力がありますから。特に魔力は飛びぬけてますよ」
勢いよくタクトの周りを飛び回りながらその身に宿る力について話を進める。
要点を搔い摘むと”有り余る世界屈指の魔力にて身体を強化する事により人類最強の力を得る事が出来る”との事だった。
流石のタクトもこれには笑みが零れる。
人類最強などと言われて嬉しくない訳がない。
泣いたカラスがもう笑うと言う奴に似ているだろうか。
「あと、私と
ふと似たようなものとして前世の記憶として神様の分霊などが出て来るゲーム等を知っていたタクトは、そんなものかと納得する。
「み、ミニエルでお願いします…」
「ふぁーちゃんでも良いのに」
どうやらタクト的にはふぁーちゃんと呼ぶのは少し照れくささが残る様だ。
恐らく本体である天使ファヌエルも同じ呼び方を提案していた事も関係あるのだろう。
「つまり私は
何時しか周りを飛ぶ速度もゆっくりとなり、やがて落ち着いたかのように近くのテーブルに降り立つと、小さな少女――ミニエルは説明を続ける。
「そして
タクトもそれを想定していたのでそこに疑問点は無い。
でしたと言う過去形になっている部分以外には。
あと、おそらくそのままの能力になっていたとしても呼び出し頻度は悪戯電話位はあったであろうが…
「でしたって事は今は違うのか?」
つい疑問点を口に出してしまったタクトであったが、それを聞いたミニエルは待ってましたと言わんばかりの反応を見せる。
「そうです、タクトさん!」
余りの気合の入りっぷりにちょっと引き気味なタクトを他所に、テンションを上げていくミニエル。
「良いですか?今のあなたは天使の核が一割程とは言え融合している状態です。
ちょっと所かかなり古い気がする言葉を交えて話す辺り、ミニエルのテンションは暴走気味に見えるのは気のせいではないだろう。
尚も引き気味なタクトを他所にミニエルは何処までも進んでいく。
「つまりですね、繋がり過ぎちゃったんです。私が生まれてしまう位には。整理するとタクトさんは
それを聞いたタクトは盛大に噴き出す。
既に夜中と言っても差し支えない時間であるにも拘らず、声のボリュームを大にしてしまう程には冷静さを失う事となった。
「ちょっとまて~~~!それって危ない関係って奴じゃねーか!」
予想外の大きな声に、まぁまぁちょっと落ち着きましょうよと宥めると、深呼吸をするように勧めて、落ち着いたころを見計らって。
「危ない関係?大丈夫ですよ、血の繋がりとかありませんし」
とあっさり言い放つのである。
この辺りは天使と人間の倫理観の違いも影響するのであろうか。
兎に角ミニエル的には全く問題が無い事の様だ。
それからも暫くこの様な感じで身体と能力についての話が続く。
朝日が昇りだす頃になって漸く二人は就寝するのであった。
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