私の家業は季節造りです。

宵闇(ヨイヤミ)

第1話

私の家は代々、季節を作っています。

春、夏、秋、冬のすべての季節を一から作っています。どの季節も作るのは簡単ではありません。

例えば、今のこの夏、この暑さは太陽の近くから取ってきました。そして時々吹く風は雲の上から、雨は雲の中から取ってきました。

取るのはそう難しいことではありません。しかし、暑さや寒さを取るのは一苦労します。

太陽はとても熱いので、その周りの暑さを取ろうと思ってもなかなか近くへ行けませんでした。なのでいける範囲で、なるべく多くの暑さを取ります。しかしそのせいなのか、年々地球の暑さは増していってしまっています。

あまり取らないように気をつけてはいるのですが、太陽の熱さも上がっていたようで、やはり取り過ぎてしまいます。

それに比べると春は作るのがまだ簡単です。夏用の暑さを減らし、そこに少しだけ南極の風を混ぜます。そして気持ちいいと感じるくらいの日差しが当たるように雲を少し減らします。

秋は暑さは要りません。冷たい南極の風を吹かせ、雲を増やします。そしてたまに雲をかき分けて地上へと日を当てます。

冬は南極と北極の風を混ぜたものを吹かせます。そして夏の梅雨で溜めておいた水を雲の上で凍らせ、それを細かく削り地上へと降らせます。

それに季節ごとに星も飾ります。

紺色の綺麗なカーテンに金色に光る星をつけていきます。7月7日の七夕は星を飾るのがとても大変です。織姫様と彦星様のためにたくさんの星を飾り川を作らなければなりません。綺麗な天の川になるようにと、ひとつひとつ丁寧につけていきます。


季節を作るのはそうは難しくありません。コツさえ掴むことができれば、あとは混ぜたりするだけです。星もつける場所を大体覚えていれば大丈夫です。

しかし慣れてきてもなかなかできないことがあります。それは微調整です。

例えば、暑さを少しでも暑くないようにしようと思い冷たい風を混ぜようと入れてみると気温が低くなり夏ではなくなってしまいます。また、秋を寒くし過ぎないようにほんの少しだけ暖かい空気を入れてみると、暖かい秋になってしまったりもします。


作るのは確かに難しくはありません。

しかし、楽な作業は何ひとつありません。

季節をひとつ作るだけで、私の家はみんないつもバタバタしています。

星は祖父母が、季節を作るための材料は父で、それらを合わせるのが母です。

私はまだ子供なので見習いのようなものです。なので母の仕事を手伝っています。

今では大体のことができるようになり、最近では星が作れるようになりました。

形はまだ少し歪です。しかし、いつかは母のような綺麗な星を作れるようになりたいと思っています。



春、夏、秋、冬の四季の中で、皆さんが一番好きな季節はなんですか?

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私の家業は季節造りです。 宵闇(ヨイヤミ) @zero1121

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