第58話
「詳しく!お願いしまっス!」
「ラルシュにセレナっていう恋人がいたのは知ってる?」
「一応訂正しておくと、いるだから。いたじゃないからね?」
「それはどうでもいいんだけどォ…」
「そのセレナがね、高等科に上がるときに居なくなっちゃったのよねェ…」
「居なくなった?」
「セレナは王女だったから多分王家も学者にする気は無かったんでしょうねェ。
セレナは高等科の入学式の時には既に姿を消してたんだよね。今でも覚えてる。
「それでねェ、私立のお嬢様寄宿学校に入れられたセレナの為にラルシュはどうしたと思う?」
「…手紙を書いた、とかっスかね?」
「真夜中の女子寮に忍び込んだのよねェ、ラルシュ?」
「もうやめて桜綾…」
恥ずかしさに耐えきれなくなった僕は机に突っ伏する。
なんであんなに大胆なことができたのか、今でも謎だ。
「それでその時にラルシュがなんと朝帰りしてきてねェ…」
「マジっスか⁈」
「昔の話だから!」
必死で訂正する。今はしないよ⁈
「その時にこってりラルシュは怒られてねェ。でもセレナとは当分会えないし、寝てないし、あと何かあったみたいでラルシュはイライラしてて…」
「それでどうしたんスか?」
「ラルシュの担任がすっごく口の悪いやつでねェ、“お前が会いに行ってた女生徒ってのは誰なんだ?どうせビッチなんだろ?”って言っちゃって…」
その後のことはもう忘れたくて仕方のない完璧黒歴史だ。
「ラルシュったらァ、先生の耳すれすれに拳銃ぶっ放したのよォ!」
「おおーっ!」
拍手された。僕としたらもう穴に埋まりたい。悶死しそう。
「“これ以上僕の恋人を侮辱するなら、次は手元が狂うかもしれません”って言って拳銃見せるラルシュは怖かったわァ〜」
「めっちゃいいっス!」
「弾は入ってなかったから!」
そんな問題?と再び一蹴された。僕の黒歴史暴露大会はまだ続くらしい。
「それで友人としては黙ってられないでしょう?私と、あとラルシュがいつもつるんでたジャファルっていう男がいたんだけどォ…」
桜綾はにっこりと笑ってまだまだ黒歴史を続ける。
「2人でラルシュに加わって臨戦したわァ〜」
「り、んせん?」
ポカーンとしている彩ちゃん。
「だからァ、先生が殴り返そうとしてきたものだから私とラルシュは銃、ジャファルは魔法で応戦したの」
「え、ヤバイじゃないスか!」
「だから弾は入ってなかったって…」
ツッコミに疲れてどんよりとしている僕と反対に桜綾はキラキラしている。
「そのおかげでラルシュは一躍、いじめられっ子から“カッコよすぎる過激派優等生”に転身したんだから万事オーライよォ!」
「オーライなわけあるかー!」
とりあえず突っ込んだ。
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